抄録
キネシンは、ATP加水分解時の化学的エネルギーを利用して微小管上を運動する分子モーターである。その生理的役割は細胞内物質輸送、神経系での軸索流など様々である。マウスでは約50種類、C.elegansでは約20種類、Arabidopsisでは約60種類のキネシンが存在していて、いくつかのサブファミリーに分類される。Arabidopsisでは植物特有のサブファミリーの存在も示されている。Oryza sativa(イネ)でもそれぞれのサブファミリーに対応するキネシンが存在しているものと考えられるが、その遺伝学的解析や、生化学的解析はほとんど行われていない。本研究では、他種キネシンとの性質の違いや共通性を通じてイネキネシンの構造と機能を明らかにすることを目的とし、イネキネシンを調製することとした。6種類のイネキネシン遺伝子をPCRで増幅し、cDNAを調製した。このうちの一つ(植物特有のイネキネシン)をpET21aに組み込んでBL21(DE3)LysEにtransformしIPTGで誘導発現する事に成功した。そして、イネキネシンのATPase活性、微小管との相互作用を調べ、これらの結果をマウスキネシンKIF5a、および線虫キネシンunc-116と比較検討した。現在、蛍光標識したATPアナログを合成して、ATP結合部位の構造変化を生化学的に解析中である。また、他のイネキネシンの調製も試みている。