日本透析医学会雑誌
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症例報告
維持血液透析を施行したミトコンドリア病の1剖検例
常世田 智明稲熊 祐輔宮城 愛辻本 育子中嶋 貴瀬嵜 良三氏平 伸子
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2017 年 50 巻 1 号 p. 87-92

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抄録

症例は59歳の初診時に腎機能障害を認め血液透析導入. 同時期に心機能障害, 2型糖尿病も指摘. 腎生検未施行であり, 糖尿病性腎症と臨床診断していた. しかし, 「頭痛, 嘔吐, 感音難聴, るいそう, 知能低下, 母が心疾患であること, 血中乳酸値が繰り返し2mmol/L以上」などからミトコンドリア病を疑い, 65歳時に遺伝子検査を提出. tRNA-Leu (UUR) 3243A→G変異を認め, MELASが疑われた. その後, 遷延する低血糖をきたし死亡. 剖検を行ったが, 低血糖の原因となりうる形態的な病変は確認できなかった. 腎臓は廃絶状態であり, 腎不全に至った正確な病変の判定が困難であるが, ミトコンドリア病に関連した腎不全の可能性があると思われた. 心筋, 脈絡叢上皮細胞の電子顕微鏡検査にて, 異常なミトコンドリアの増多を認め, 病理学的にもミトコンドリア病の所見を示していた.

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© 2017 一般社団法人 日本透析医学会
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