日本透析医学会雑誌
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特集:腹膜透析(PD)の未来
腹膜透析 (PD) 特集の目的と狙い
横井 秀基
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2017 年 50 巻 11 号 p. 673-676

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抄録

本邦における透析患者数は増加の一途をたどっているが, 腹膜透析 (PD) 患者数は約20年間1万人弱に留まっている. しかしながら, 世界的にはPD患者数は増加傾向であり, 特に中国やメキシコでの患者増加数が著しい. 世界各国とは血液透析 (HD) 施設へのアクセスや医療経済政策制度の違いなどがあり一概に比較はできないが, PD医療において腹膜透析液やデバイスは進歩しており, 20年前と同一ではない. また, PDにおいては, 臨床研究が患者数の少なさより十分に行われていなかったが, 近年多数例の臨床研究が報告されるようになり新しいエビデンスが創出され, 本邦の腹膜透析ガイドラインも整備されてきた. 基礎研究では, 新しい透析液における腹膜中皮細胞障害性の軽減機序や腹膜線維症モデルマウスの障害機序が解明されてきた. これら透析液の進歩により現在の被囊性腹膜硬化症 (encapsulating peritoneal sclerosis: EPS) の病態は以前のものと異なってきている. PD患者の病態を十分把握しメリットを最大限享受することは, 透析医療の将来展望として必要である. 現在においても, PD+HDハイブリッド療法は増加しており, HDとPDはお互いに独立した医療ではなく, オーバーラップしつつ患者に最大限の利便性を提供している. PD治療を医師のみが推進することでは, 在宅医療・自己管理に基づく透析医療は成り立たず, 患者ケアならびに食事療法が求められる. 本特集では, 以前より着実に進歩しているPD療法を実感すべく, それぞれの専門家にご執筆いただき, 現在のPD療法を総括しつつPDの未来展望に焦点を当てていく.

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© 2017 一般社団法人 日本透析医学会
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