2017 年 50 巻 3 号 p. 203-206
症例は69歳女性. 慢性糸球体腎炎を原疾患とする末期腎不全にて, 53歳から当院で維持透析中である. 透析導入16年目に血尿を契機に膀胱癌が発見され, 経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TURBT) を施行した. 以後, 単純CT, 膀胱ファイバー, 洗浄細胞診で経過観察していたが, 約3年後に定期の単純CT検査で右腎癌が疑われ, 後腹膜鏡下右腎摘出術を施行した. 病理結果は右腎盂癌の診断だった. 退院後1か月目の単純CTで左尿管癌が疑われ, 後腹膜鏡下左腎尿管摘出術+膀胱全摘術+残存右尿管摘出術を施行した. 約1年後, 小腸脱に対して膣閉鎖術を施行したが, 転移・再発等なく経過している. 透析患者は乏尿などのため尿路上皮癌の診断が困難なことが多く, 発見が遅れる傾向にある. 透析患者には腎癌・膀胱癌等の尿路悪性腫瘍の合併が多いことが知られているが, 腎盂尿管腫瘍の合併も疑う必要がある. 長期透析患者に発症した本病態につき, 若干の文献的考察を加えて報告する.