2017 年 50 巻 3 号 p. 213-218
近年, 非侵襲的心拍出量モニターは血液透析中の血行動態評価などさまざまな状況で汎用されているが, バスキュラーアクセス造設前後での血行動態を評価した報告はない. 今回, 肘部にて造設した2症例について, 造設前後での血行動態の変化を同モニターにて評価した. 症例1は84歳女性. 造設直後より全身血管抵抗の低下と一回拍出量の増加を認めた. 症例2は91歳男性. 造設後も一回拍出量や全身血管抵抗等に著変を認めず, スティール症候群や血清腫を認めた. バスキュラーアクセスの造設は, 動静脈瘻による血管抵抗の低下やシャント血流に伴う一回拍出量の増加, 血管壁のストレスと血管径の関係性の変化, またそれに伴う脈波伝播の変化等が血行動態に影響を与えるとされる. 異なる臨床経過をたどった2症例の検討から, 造設前後の血行動態の評価に同モニターは有用であると思われた. 少数例での検討であり今後さらなる症例の集積が必要である.