日本透析医学会雑誌
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症例報告
施設入所中に短時間の圧迫にてcrush症候群を発症した高齢女性の1例
上床 美紀吉嶺 陽仁阿部 正治水間 英美子山下 和潤田 心久保 拓也濵田 富志夫徳永 公紀井戸 章雄
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2018 年 51 巻 6 号 p. 401-408

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抄録

症例はうつ病・認知症のため施設入所中の77歳女性. 職員訪室の1時間後, ベッドから上半身が柵を乗り越えるかたちで頭から床へ転落しているところを発見された. 下腹部が柵に押し付けられ, 下半身はベッド上にある状態であった. 救出後に下肢運動消失を認め, 翌日には腎機能障害, 高K血症が出現したため当院へ搬送された. 受傷機転・諸データよりcrush症候群による急性腎障害・DICと診断した. 大量補液を行うも無尿状態であり, 同日より血液透析を施行. 透析は3回で離脱し, その後DIC・下肢運動機能も改善した. Crush症候群は震災・事故時の発生が注目されやすいが, 長時間の圧迫という状況があれば日常でも生じうる病態であり, 痩身や高齢者においては短時間での発症も報告されている. その発症の可能性が念頭に置かれていない場合にはしばしば生命を脅かす事態に至る深刻な病態であり, 診断には受傷機転の聴取が重要である.

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© 2018 一般社団法人 日本透析医学会
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