日本透析医学会雑誌
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症例報告
血液透析を施行したゲムシタビンによる薬剤性血栓性微小血管症の2例
越野 瑛久越智 雅彦小林 拓白石 詩織上川 康貴能勢 知可子川端 雅彦
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2019 年 52 巻 3 号 p. 191-197

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抄録

症例1は70歳代, 男性. 膵癌術後再発に対してゲムシタビンが投与された. 2年間の治療後, 急性腎障害, 破砕赤血球を伴う溶血性貧血と血小板減少を認め入院し, ゲムシタビンによる血栓性微小血管症 (TMA) と診断した. 同薬を中止しステロイドパルス療法, 全血漿交換, 血液透析を行ったが, 透析は離脱しえなかった. 第37病日に肺炎にて死亡した. 剖検で糸球体基底膜の二重化, メサンギウム融解, 糸球体の分葉化のTMA所見を認めた. 症例2は80歳代, 女性. 胆管癌術後再発に対してゲムシタビンが投与された. 投与9か月後に高度腎機能障害, 破砕赤血球を伴う溶血性貧血, 血小板減少を認めた. ゲムシタビンによるTMAと診断し, 薬剤を中止し血液透析を開始した. 腎機能は回復せず維持透析に移行し, 11か月後に癌死した. ゲムシタビンによる薬剤性TMAは, 生命に関わる合併症であるが確立した治療法はない. 溶血所見の早期認知と薬剤中止が肝要である.

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© 2019 一般社団法人 日本透析医学会
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