日本透析医学会雑誌
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52 巻, 3 号
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原著
  • 伊藤 明人, 阿部 貴弥, 石井 修平, 松浦 朋彦, 杉村 淳, 佐々木 成幸, 高澤 由美子, 加藤 哲夫, 小原 航
    2019 年52 巻3 号 p. 151-157
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

    エテルカルセチド塩酸塩 (Etel) 開始後の増減については, 各主治医の判断となる. そのため複数の医師による透析管理が行われている施設では, 同一施設内においてもEtelによる二次性副甲状腺機能亢進症 (SHPT) の管理に異なりが生じる可能性がある. 今回, 同一施設内でのEtelによるSHPT管理に異なりが生じないようにEtel投与プロトコールを作成し, その効果について検討した. プロトコールはEtel国内第Ⅲ相長期投与試験に準じ作成した. 22名を対象とし, 研究期間はEtel開始時から開始後28週間目までとした. 研究期間内に, 他因子での死亡2名を含め5名が脱落したが, 17名が研究を完遂した. Etelの投与量は5mgから, 終了時には4.4±1.7mgに有意に低下した (p=0.0084). またintact-PTHが240pg/mL以下に管理された患者数は22名中12名 (54.5%) から終了時には15/17例 (88.2%) と有意に増加した (p=0.0238). 今回作成したプロトコールでは明らかな副作用の出現もなく, 効率的にSHPTの管理が可能であった.

  • 野垣 文昭, 鈴木 訓之, 杉田 和哉
    2019 年52 巻3 号 p. 159-165
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

    経皮的腹膜透析カテーテル留置術は局所麻酔で施行できるカテーテル留置法である. 当院では超音波および透視を用いたSeldinger法による同留置術を20名の患者に施行し, 1名で腹腔穿刺ができず断念したが, 腹部手術歴のある6名を含む19名でカテーテル留置に成功した. 腸管穿刺は起きなかった. SMAP法8名, 一期的導入9名 (待機期間6~16日) で腹膜透析を開始しているが, 液漏れは認めていない. 早期合併症として, カテーテル先端位置異常2名, 腹膜炎1名, 血性排液2名のうち1名はカテーテル閉塞に至ったが, いずれも非観血的に対処可能であり腹膜透析が継続できた. 1名で留置15か月後にカテーテル抜去を行ったが, 局所麻酔のみで容易であった. 本留置術は低侵襲であり, 透析患者の高齢化が進むわが国においても有用な腹膜透析カテーテル留置法である.

  • 葛原 敬八郎, 葛原 信三, 井上 英行, 木村 和生, 大坪 茂, 三浦 康子
    2019 年52 巻3 号 p. 167-176
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

    透析療法の進歩は, 高度動脈硬化症例, 難治vascular access trouble (VAT) 例とともに二次的な動静脈瘻 (arteriovenous fistula: AVF) 再建例を増加させた. 今回, 二次的AVF法再評価のため, 表在化上腕尺側皮静脈 (transposed basilic vein: TBV) と上腕動脈のAVF例 (Ⅰ群), TBVと橈骨動脈/尺骨動脈・既存前腕アクセスのAVF例 (Ⅱ群) を, 動静脈吻合部位とアクセス開存率・VAT頻度から比較した. 対象はアクセス喪失確認例と3か月以上観察151例 (Ⅰ群96例, Ⅱ群55例) で, 平均37月観察した. Ⅰ群の一次開存率1年40%, 2年24.7%, 二次開存率1年91.7%, 2年85.2%, Ⅱ群の一次開存率1年39.5%, 2年28.5%, 二次開存率1年92.4%, 2年87.1%であった. 初回percutaneous transluminal angioplasty (PTA) を初回VATと捉えた, VAT頻度はⅠ群86.5%, Ⅱ群83.6%と高率だが, Ⅰ, Ⅱ群の開存率, VAT頻度に差はない. 両群5年二次開存率はPTA効果もあり, 80%前後に維持された.

症例報告
  • 宮崎 良一, 宮城 恭子, 川村 里佳
    2019 年52 巻3 号 p. 177-184
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

    血液透析患者では低亜鉛血症の頻度が多く, 一部の症例でESA低反応性貧血の1因となっている. 2017年3月に本邦で初めて低銅血症に適応を有した酢酸亜鉛が発売された. 今回ESA低反応性貧血を有する維持血液透析患者3例に酢酸亜鉛100mg/日を投与した. 投与後4~7か月後に血清銅濃度が0~3μg/dLと著明な低値をきたし, 汎血球減少症などの低銅血症性血液障害を呈した. 3例とも酢酸亜鉛を中止しESAを増量した. また2例では輸血を行い, 純ココア10g/日の内服を行い3例とも血液障害は改善した. 提示症例以外の低亜鉛血症を有する維持血液透析患者22例に酢酸亜鉛を投与し, 血清銅濃度は投与前78.2±15.4μg/dLから6か月後60.6±18.6μg/dLまで低下したが, 投与中酢酸亜鉛量を必要に応じ減量したため全例血液障害は認めなかった. 維持血液透析患者に酢酸亜鉛投与時は定期的な血清銅濃度の検査を行い, その投与量を調節する必要があると考察した.

  • 松本 啓, 金澤 伸洋, 鈴木 泰平, 森川 友喜, 稲葉 大朗, 伊與田 雅之, 山宮 知, 坂木 理, 吉田 仁, 柴田 孝則
    2019 年52 巻3 号 p. 185-190
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

    症例は90歳代の男性. 9年前に腎癌のため右腎を摘出された. その後, 高血圧, 腎機能障害を指摘され, 3年前に血液透析を導入された. 経過中, 内シャント不全, 透析回路凝血を繰り返すため抗血小板薬を内服していた. 今回, 血液透析後に吐血したため当院を受診し, 血液検査で肝胆道系酵素の上昇, 腹部単純CTで胆石と緊満・壁肥厚した胆囊を認め, 急性胆管胆囊炎と上部消化管出血の診断で入院した. 内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) を行い, 十二指腸乳頭部からの出血を認め胆道出血と診断した. 出血源の検索目的で造影CTを行い胆囊仮性動脈瘤からの出血と診断し, 動脈塞栓術を行った. 術後, 胆道出血は改善し, 経過は良好で第19病日に退院した. 維持血液透析患者の胆囊仮性動脈瘤破裂による胆道出血はまれであり, 本例の病態に腎不全の関与が示唆され, また, 透析患者の上部消化管出血の鑑別疾患として念頭におく必要があり, 貴重な症例として報告する.

  • 越野 瑛久, 越智 雅彦, 小林 拓, 白石 詩織, 上川 康貴, 能勢 知可子, 川端 雅彦
    2019 年52 巻3 号 p. 191-197
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

    症例1は70歳代, 男性. 膵癌術後再発に対してゲムシタビンが投与された. 2年間の治療後, 急性腎障害, 破砕赤血球を伴う溶血性貧血と血小板減少を認め入院し, ゲムシタビンによる血栓性微小血管症 (TMA) と診断した. 同薬を中止しステロイドパルス療法, 全血漿交換, 血液透析を行ったが, 透析は離脱しえなかった. 第37病日に肺炎にて死亡した. 剖検で糸球体基底膜の二重化, メサンギウム融解, 糸球体の分葉化のTMA所見を認めた. 症例2は80歳代, 女性. 胆管癌術後再発に対してゲムシタビンが投与された. 投与9か月後に高度腎機能障害, 破砕赤血球を伴う溶血性貧血, 血小板減少を認めた. ゲムシタビンによるTMAと診断し, 薬剤を中止し血液透析を開始した. 腎機能は回復せず維持透析に移行し, 11か月後に癌死した. ゲムシタビンによる薬剤性TMAは, 生命に関わる合併症であるが確立した治療法はない. 溶血所見の早期認知と薬剤中止が肝要である.

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