日本透析医学会雑誌
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原著
血管狭窄病変でのLesion-Slip現象
本宮 康樹野島 武久
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2020 年 53 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

透析患者での自己血管内シャントや人工血管留置内シャントなどに起こりうる血管狭窄に対し, 現在血管拡張用バルーンによるVAIVT (vascular access intervention therapy) が広く行われている. VAIVT時のバルーンが狭窄病変部位で完全拡張できない場合いわゆるドッグボーン変化が観察され, 病変の不完全拡張や残存狭窄となることがある. 今回ドッグボーン変化について拡張部位に生じている病変動態を実験的に検討し, 拡張部位血管と周囲組織がバルーン拡張時に集簇することによりバルーン拡張への抵抗性を獲得していることがその本態であることを確認し, Lesion-Slip現象と名付けた. 臨床的検討ではLesion-Slip現象は, より高圧での拡張が必要となることや, 組織の集簇に伴い過疎となった周辺部分での血管裂開や新規病変の誘発なども引き起こしている可能性が示唆された. Lesion-Slip現象の抑制効果を有する血管拡張用バルーンは, より低圧での病変部位完全拡張, 血管損傷の低減につながる可能性がありバルーン選択の一助となると思われた.

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© 2020 一般社団法人 日本透析医学会
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