2020 年 53 巻 5 号 p. 259-264
症例は73歳男性. X−9年の血液透析導入時よりheparin-induced thrombocytopenia (HIT) 抗体陽性であったため, 血液透析時の抗凝固薬としてメシル酸ナファモスタット (NM) を使用していた. X年, 透析後に繰り返す発熱が出現した. 血液培養は陰性で, 抗菌薬投与でも改善しなかった. 汎血球減少を認め, 染色体異常から骨髄異形成症候群 (MDS) と診断したが, 熱源としては否定的であった. 入院第36病日より抗凝固薬をNMからアルガトロバンに変更することで, 透析後の発熱は消失し, NMに対する薬剤添加リンパ球刺激試験が陽性であることよりNMによる薬剤熱と診断した. 本症例のように9年間と長期連続使用したNMによる薬剤アレルギーの既報はない. 高齢化や外科的処置等の増加により透析患者の出血性合併症は増加し, NMの使用機会も増加している. 本症例は, NMは長期連続使用下においてもなお, 薬剤アレルギーの原因となることを喚起する貴重な症例と考え報告した.