日本透析医学会雑誌
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症例報告
両価性を意識させることで透析導入への動機づけを図った高齢末期腎不全患者の1例
前川 道隆加藤 千洋三木 祐介
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2020 年 53 巻 5 号 p. 265-270

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抄録

医療現場では, 困難な決断を迫られることで医療チーム, 患者, 家族の間に軋轢が生じることがある. また, 腎不全が進行し透析の説明を受けることで, 病気や生活の変化に直面し, 透析治療を勧められても拒む患者もいる. 内的な動機づけが不十分なまま透析を始めると, 内服や透析へのアドヒアランス低下やセルフケアの不足などにより予後悪化や生活の質の低下につながる懸念がある. 本稿では, 高齢末期腎不全患者の透析拒否に動機づけ面接を用いた心理的アプローチで対応した事例を報告する. 治療への恐怖に寄り添うとともに, 治療を行った場合に得られる利益や家族との関係の重要性を意識できるように介入し, 透析を受けて生きていくという決意を患者から引き出した. 動機づけ面接は生活習慣病など行動変化を必要とする領域で有用性が実証されている技法だが, 患者の自律性を尊重し, 治療選択に関する両価性を扱うことを通し, 疾病受容を促すことにも活用できる.

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© 2020 一般社団法人 日本透析医学会
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