日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
症例報告
新型コロナウイルス感染症に後腹膜出血を合併した透析患者の1例
―類似症例を踏まえての抗血栓療法に関する提言―
岡 英明本間 義人恩地 芳子櫻井 裕子関本 美月安藤 翔太岩本 早紀岩本 昂樹近藤 美佳梶原 浩太郎牧野 英記松田 健近藤 陽一佐藤 格夫上村 太朗
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 54 巻 11 号 p. 583-589

詳細
抄録

症例は73歳,男性.7年前に糖尿病性腎症で血液透析を導入,冠動脈ステント留置後で抗血小板薬を内服中であった.接触者検診で新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)と診断され当院に入院した.肺炎像は軽微であったが,D‒dimerが陽性でありヘパリンの予防投与を開始した.第2病日より38℃台の熱が続くため第4病日にデキサメタゾンを開始した.第6病日に腰痛が出現し,翌日には腹痛に変化した.同日の透析中にショックを呈し,貧血も進行しており透析を中止した.造影CTで左後腹膜出血と造影剤の漏出を認め,輸血を開始し感染対策を行った上で血管造影を行った.腰動脈出血を同定しコイル塞栓術で止血した.以後は貧血の進行を認めず,第60病日に転院した.COVID‒19では血栓性合併症が多くしばしば予防的ヘパリン投与が行われる.一方で抗血小板薬内服例や透析例は出血合併症のリスクが高く,抗血栓療法に関して慎重な判断が求められる.

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top