2021 年 54 巻 7 号 p. 381-386
症例は35歳,男性.入院前日より心窩部痛が出現し増悪傾向であった.当院救急外来を受診し,腹部CTにて膵周囲脂肪織濃度上昇を認め,急性膵炎の診断にて入院となった.入院時の重症度はCT grade 1点,予後因子0点であったが,採血にて血清トリグリセリド(TG)値11,374 mg/dLと著明な上昇を認めた.血清クレアチニン(Cre)値1.66 mg/dLと急性腎障害も伴っており,総合的な重症化リスクは高いと判断し,一般的な急性膵炎治療に加えTG除去を目的とした二重濾過血漿交換療法(double filtration plasmapheresis: DFPP)を2日間施行した.その後,血清TG値は速やかに低下し,良好な経過をたどった.高TG血症を伴う急性膵炎に対し,血漿交換療法は速やかに血清TG値を低下させる効果があるとされている.そのデメリットとして大量輸血に伴う感染や電解質異常,費用面での問題が指摘されているが,アルブミン置換液によるDFPPで代用することで,デメリットを回避しつつ病態の改善を得られる可能性がある.