透析患者は慢性的に酸化ストレスが高く,この酸化ストレスは,透析患者の炎症反応を亢進し,さまざまな合併症の発症や重篤化との関連が指摘されている.今回,水素ガス吸入法による水素ガスの摂取が透析患者の酸化ストレスに及ぼす影響を検討した.対象は,血液透析患者6名で,酸化ストレス,抗酸化力およびC反応性蛋白(c‒reactive protein: CRP)を評価指標とし,酸化ストレスおよび抗酸化力は,活性酸素代謝物(diacron‒reactive oxygen metabolites: d‒ROMs)および生物学的抗酸化力(biological antioxidant potential: BAP)を測定することで評価した.透析患者は,透析開始の5~10分前に水素ガス吸入を開始し,透析終了後も5~10分間は水素ガス吸入を続けた.なお,水素ガス吸入は,透析機会6回(2週間)連続で行い,その後は通常の透析に戻して,効果の持続性も検討した.透析中の水素ガス吸入により,被験者の酸化ストレスの平均値が433 U.CARRから395 U.CARRに減少し,CRPは1.05 mg/dLから0.61 mg/dLに減少した.さらに,水素ガス吸入を中止した後も効果は持続し,酸化ストレスは349 U.CARRに減少し,CRPは0.42 mg/dLに減少した.水素ガス吸入は簡便かつ安価であり,小規模の透析施設や在宅透析の患者でも実施しやすく,多くの透析治療の場面で合併症予防や予後改善の効果が期待できる.