2021 年 54 巻 9 号 p. 471-479
症例は70歳男性.6年前に腹部大動脈瘤人工血管置換術,冠動脈形成術,5年前に脳動脈瘤コイル塞栓術の既往がある.今回,食欲不振を主訴に受診し血液検査にて急激な腎機能低下を指摘され当院紹介入院となった.両足底・足趾に紫斑を多数認め,コレステロール結晶塞栓症(CCE)が疑われた.第2病日よりスタチン投与とステロイド投与を開始したが腎機能の改善はみられず,第4病日より血液濾過透析を開始した.その後の皮膚生検と腎生検の結果CCEと確定診断した.第10病日よりLDL吸着療法を開始した.以後腎機能は徐々に回復し第30病日に血液濾過透析を離脱できた.その後小腸穿孔を3回発症し2回の手術を必要としたが,結果的にCCEによる急激な腎機能増悪と繰り返す小腸穿孔に対する外科手術後に,ステロイド投与とLDL吸着療法による積極的脂質降下療法の併用により3か月以上生存することができた稀な1例を経験したため報告する.