2022 年 55 巻 7 号 p. 447-452
症例は57 歳男性.原疾患不明の末期腎不全で約10 年前に透析が開始された.当院に副甲状腺摘出術目的で入院となった際,持続する発熱とCRP 陽性を認めていたため精査を行った.複数回の抗菌薬を未投与下での血液培養は陰性だったが,2 回目の心エコーにて大動脈弁に構造物を認め,感染性心内膜炎を疑った.抗菌薬加療を開始し炎症所見は改善したが,疣贅の可動性が増強したため大動脈弁置換術を施行した.その後大動脈弁組織よりPropionibacterium acnes を認め,経過も踏まえ感染性心内膜炎と診断した.この細菌は皮膚・口腔内の常在菌だが,稀に感染性心内膜炎の原因菌となり,また血液培養陰性の割合が高く,診断に苦慮することがある.透析患者では血液培養が陽性になりにくい細菌で感染性心内膜炎を起こすこともあり,留意する必要がある.