2022 年 55 巻 7 号 p. 453-458
症例は69 歳男性,腎硬化症にて2011 年血液透析導入された.左腎癌(淡明細胞型)に対して2020 年6 月開腹左腎摘除術を施行した.2021 年7 月のCT で多発肺転移巣を認め,IMDC リスク分類で中リスクであり,同年8 月より免疫チェックポイント阻害療法(ニボルマブ・イピリムマブ併用療法)を開始した.day 30 より急激な血圧低下を認め,ACTH,コルチゾール低下傾向にあり,day 35 よりヒドロコルチゾン20 mg/day 内服開始とした.まもなく血圧は安定しday 49 よりヒドロコルチゾンは10 mg/day に減量した.その後ACTH 負荷試験を施行,コルチゾールは正常反応を示し,副腎機能は保たれていた.また2 者(CRH・TRH)負荷試験では,CRH 負荷でACTH 低反応,コルチゾール無反応,TRH 負荷でTSH 無反応,プロラクチン低反応であった.他の下垂体前葉ホルモンも低下傾向にあり,汎下垂体機能低下症をきたしていると考えられた.治療効果に関しては3 コース施行後PR(partial response)を認め,5 コース施行後もPR を維持し主要病変は消失した.