2022 年 55 巻 9 号 p. 541-545
症例は糖尿病性腎症を原疾患とした血液透析中の67歳男性で薬剤性の水疱性類天疱瘡に対してステロイド内服が2 年間継続されていた.右腕でスチール症候群を発症したため,左上腕動脈表在化術を施行した.術後16 日目に肘関節を屈曲した際に,動脈から拍動性出血を認めた.初回穿刺前にもかかわらず動脈損傷を認め,縫合修復した.しかし,その後3 日目に腕を屈曲させた際に再度の動脈性出血をおこし,出血点を確認したところ前回とは異なる箇所に1 cm 大の動脈壁欠損を認めた.止血のために行った用手圧迫による動脈損傷は激しく,損傷部位を人工血管で置換し,動脈は表在化せず深部に埋没した.その後,長期留置カテーテルを挿入し,透析を継続した.スチール症候群や心機能低下などにより自己血管使用皮下動静脈瘻が作製できない患者において動脈表在化は有用な方法だが,脆弱な皮膚組織や高度な動脈石灰化を認める場合にはその適応を慎重に考える必要がある.