2024 年 57 巻 1 号 p. 29-35
71歳男性.2012年に肺胞出血,検尿異常,腎機能障害のため入院し,MPO-ANCA陽性が判明.ANCA関連血管炎と診断し,ステロイド療法と各種免疫抑制薬で肺胞出血は消失した.2016年頃よりCre値は徐々に上昇し保存的加療の方針となったが,2017年3月には肺胞出血が再燃しステロイドパルス療法を要した.2017年10月に血液透析導入となった.導入時にも肺胞出血を認めステロイドパルス療法を行い,数日内に血痰は消失し呼吸器症状はなかった.以前よりニューモシスチス肺炎予防のためST合剤を内服していたが,第19病日に胸部単純X線で右中肺野に結節影が出現し,その後急速に増大.喀痰検査から肺ノカルジア症と診断した.ST合剤を中心とした加療で結節影は縮小,良好な経過が得られた.透析導入期には細胞性免疫低下のため結核の発症例が多いことが知られているが,免疫抑制療法を行っている透析導入期患者ではノカルジア感染症も考慮すべき疾患の一つかもしれない.