日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
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57 巻, 1 号
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総説
  • 岡田 一義, 川口 良人
    原稿種別: 総説
    2024 年 57 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

    腎代替療法(kidney replacement therapy:KRT)選択の共同意思決定は,医療チームと患者との対等なパートナーシップである双方向のプロセスであるが,実際には,医療チームが話し合いを主導するため,この力関係の差により不利益を与えられている患者もいる.米国と英国では,KRT選択肢にDeciding Not to Decide(DND)が追加されている.DNDは患者に選択決定を遅らせることの身体的リスクを説明したうえで決定までの期間を提供し,患者は不安感の緩和とともに意思を決定しやすくなる.医療チームと患者・家族らが,オープンなコミュニケーションに基づいたDNDの選択肢は,患者に治療計画の柔軟性を提供し,この選択肢は関係者全員に歓迎されるであろう.KRTの情報を提供する時には,腎移植,腹膜透析,血液透析に加え,患者が自主性を高めて自ら意思を決定しやすくなるDND(選択の決定延期)の選択肢を適切な時期に提供すべきである.

原著
  • 吉澤 拓, 松本 洋平, 森田 るりの, 内藤 祐子, 高橋 直子
    原稿種別: 原著
    2024 年 57 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

    エテルカルセチドからウパシカルセトへウォッシュアウト期間を設けずに一斉に切り替え,臨床検査値,併用薬に対する影響を検討した.エテルカルセチドからウパシカルセトへ切り替えた当院の血液透析患者23例を対象とし,52週間後まで観察した.切り替え後2週目でwhole PTH値は低下傾向を認め,その後8週目までは上昇傾向となり,10週目から51週目にかけて低下傾向を認めた.切り替え後1週目に補正Ca値は一過性の低下を認めたものの,速やかに切り替え前値に回復した.その後も,補正Ca値は大きな変動なく推移した.また,観察期間中に投与中止に至るような重篤な低Ca血症などの症例は認められなかった.また,併用するビタミンD製剤およびリン吸着薬投与量に有意な変動を認めなかった.これらのことから,ウパシカルセトは過度なCa値の低下が起きにくい有用なカルシミメティクスであることが示唆された.

透析技術
  • 合田 貴信, 赤木 翔, 野澤 佑介, 山口 剛史, 村山 美緒, 佐々木 祐実, 神山 匠, 金子 義郎, 小山田 諒, 福富 大介, 有 ...
    原稿種別: 透析技術
    2024 年 57 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

    【背景】2015~2016年に新規据付の透析監視装置では大半に微生物汚染を認め,標準透析液の水質基準を満たした臨床使用後も年余にわたり同一菌株が分離された.その後製造業者側は自主的に製造時の洗浄・消毒法を変更したという情報もあった.【目的・方法】当施設の新築移転時に新調した装置25台の据付時点(2022年末)での汚染度を評価した.エンドトキシン(ET)捕捉フィルター濾過前の総菌数,ET活性を測定し,菌は10日間培養し質量分析法で同定した.高度汚染のみられた装置は,初期洗浄・消毒後25日目に臨床使用に供せるか再検した.【結果】総菌数1,000ヶ/mL以上を6台,そのうちET 50 mEU/mL以上を3台に認めた(高度汚染).菌は7属,14種でα-β-Proteobacteria網が76%であった.初期洗浄・消毒後25日目には高度汚染を示したものも1~2桁有意に改善した.【結論】新調透析機器の汚染度は2015~2016年時に比べ改善したものの無菌とは言えず,初期洗浄は重要と考えられた.

症例報告
  • 島 久登, 西内 陽子, 深田 義夫, 岡本 拓也, 田代 学, 井上 朋子, 坂東 弘康, 東 博之, 岩坂 尚仁, 小原 卓爾, 土井 ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

    血液透析患者において,透析機器関連アレルギーの診断と治療は重要である.われわれは掻痒の精査で,透析液に対する薬剤誘発性リンパ球刺激試験(DLST)陽性となり,透析液の変更を行わずに対処し,症状が改善した2例を経験した.症例1は68歳男性.カーボスターPのA液のDLSTが陽性となり,プライミングを生理食塩水に変更後,症状は改善した.症例2は85歳男性.カーボスターPのB液とリンパックTA3 のDLSTが陽性となり,同様の対処と膜面積を小さい透析膜に変更後,症状は消失した.これら2症例を含む,当グループにおける透析液のDLST陽性5例の特徴を検討した.掻痒以外では3例で発熱を認め,透析液変更により1例は改善したが,腫瘍熱合併のため1例は改善しなかった.1例は偽陽性と考えられた.CRPの陽性率は高かったが,好酸球数増多は1例のみであった.透析液アレルギーを疑った際,DLSTを検討するべきである.

  • 落合 彰子, 岩切 太幹志, 菊池 正雄, 海北 幸一, 藤元 昭一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

    71歳男性.2012年に肺胞出血,検尿異常,腎機能障害のため入院し,MPO-ANCA陽性が判明.ANCA関連血管炎と診断し,ステロイド療法と各種免疫抑制薬で肺胞出血は消失した.2016年頃よりCre値は徐々に上昇し保存的加療の方針となったが,2017年3月には肺胞出血が再燃しステロイドパルス療法を要した.2017年10月に血液透析導入となった.導入時にも肺胞出血を認めステロイドパルス療法を行い,数日内に血痰は消失し呼吸器症状はなかった.以前よりニューモシスチス肺炎予防のためST合剤を内服していたが,第19病日に胸部単純X線で右中肺野に結節影が出現し,その後急速に増大.喀痰検査から肺ノカルジア症と診断した.ST合剤を中心とした加療で結節影は縮小,良好な経過が得られた.透析導入期には細胞性免疫低下のため結核の発症例が多いことが知られているが,免疫抑制療法を行っている透析導入期患者ではノカルジア感染症も考慮すべき疾患の一つかもしれない.

  • 加藤 陽一郎, 松浦 朋彦, 関口 季詠, 久野 瑞貴, 小原 航, 阿部 貴弥
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

    安全に腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)カテーテルを骨盤腔内に留置できるようにするため,軟性膀胱鏡を用いたPDカテーテル挿入術を施行したので,その方法と合併症・短期成績について報告する.本法は従来のPDカテーテル挿入術の皮膚切開に切開創を追加することなく腹膜切開創より軟性膀胱鏡を挿入する方法で,2015年12月から2017年12月までの間に術者判断により6例に施行した.全例特記すべき有害事象なく,同時期に実施した従来法10例と比較し,患者背景および周術期の手術時間や出血量および合併症などに有意差はないものの,PD継続率は有意に延長していた(p=0.019).今回の症例検討により軟性膀胱鏡を用いたPDカテーテル挿入法は気腹の必要がなく比較的安全かつ確実にカテーテルを留置できる可能性が示された.

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