2024 年 57 巻 6 号 p. 253-258
腹膜透析(PD)関連腹膜炎の原因はタッチコンタミネーションや出口部感染が多い.今回進行大腸癌からのbacterial translocationが原因と考えられた稀な症例を経験したため報告する.78歳女性,原疾患不明の慢性腎臓病(CKD)に対し4年前に当院でPD導入した.排液混濁と腹痛で受診し,PD関連腹膜炎の診断で入院した.セフタジジム(CAZ)の腹腔内投与,バンコマイシン(VCM)の静脈内投与を開始し,腹痛・排液細胞数は改善傾向であった.排液培養から検出された大腸菌は抗菌薬感受性良好であり第6病日にCAZをセファゾリン(CEZ)に変更した.しかし第9病日に排液細胞数が再上昇したため,腸管内の器質的病変からのbacterial translocationを考慮し,下部消化管内視鏡を行った.横行結腸に2型(潰瘍限局型)腫瘍を認め,大腸癌によるbacterial translocationと考えられた.PD関連腹膜炎治療中に排液細胞数が再上昇する場合や,PD関連腹膜炎を繰り返す際には,大腸癌も念頭に置き精査する必要がある.