2025 年 58 巻 3 号 p. 139-145
腎硬化症による末期腎不全で7年間維持血液透析を施行している独居・生活保護の70歳代男性.もともと透析搔痒症の診断を受けていた.X年Y月Z日に透析ベッドのシーツ上に虫体を発見し,トコジラミが疑われた.同日より,使用する透析ベッドを固定,接触感染予防策を開始した.Z+10日に皮膚科でトコジラミ刺症と診断されたことから,時間的隔離で透析を施行した.Z+36日に男性ロッカーでトコジラミを発見したため,伝播を回避するため個室透析とし,感染対策を強化した.自宅環境の改善のため,福祉担当者と駆除業者が自宅を訪問し,トコジラミ駆除のために転居が必要と判断し,施設入所する方針となった.行政と連携し,Z+120日に当院に入院,トコジラミを完全に駆除し,Z+143日に施設に入所となった.繁殖力の高いトコジラミへの対応は困難であったが,個室隔離や対応マニュアル作成,行政と連携することで感染拡大を防止することができた.