2010 年 20 巻 3 号 p. 180-185
74歳女性の急性中耳炎に続発した、S状静脈洞血栓症、髄膜炎、硬膜外膿瘍、脳膿瘍の耳性頭蓋内合併症症例を経験した。外科的処置としては鼓膜切開を施行したのみで、抗菌薬による保存的治療により軽快した。本症例は、耳疾患の既往及び全身的な基礎疾患のない成人の急性中耳炎に伴う耳性頭蓋内合併症であり、中枢所見が主症状で鼓膜所見は軽微であった。耳性頭蓋内合併症は今日では稀であるが重篤な合併症である。耳鼻咽喉科、脳神経外科がよく協議し、患者の経過を注意深く観察しながら、症例ごとに治療方針を検討する必要があると思われた。