2025 年 58 巻 3 号 p. 166-172
末期腎不全で維持血液透析中の76歳の女性が嘔吐を繰り返すため入院した.左顔面から頸部にかけて浮腫を認め,頭部MRI画像から頭蓋内静脈のうっ滞が示唆された.追加で施行した造影CTにて左腕頭静脈の高度狭窄を認めたことから,左上腕人工血管のシャント血流が頭蓋内静脈逆流を起こして頭蓋内圧亢進症となっているものと考えられた.人工血管シャントの閉鎖を行うと数日で症状は改善した.シャント血流の頭蓋内静脈逆流による神経症状は多彩であり,血液透析患者特有の血行動態に由来する病態であることから,とくにシャント肢の浮腫が目立たない場合では診断に苦慮する.一方で適切な対処で速やかに症状が改善するため,血液透析患者に原因不明の神経症状を認めた場合には頭蓋内静脈逆流が背景にないかを考慮すべきである.