抄録
近年、「場づくり」への関心が高まっているが、「(居心地のいい)場所」は、たんなる物理的な環境ではなく、人と人との相互作用が前提となって生まれる。筆者は、これまでに「食(共食)」による場づくりの実践をすすめてきた。一連の活動をとおして、「公」と「私」のあいだに存在すべき「共」の時間・空間を、即興的・一時的につくり出せることを学んだ。人びととの関係のつくりかた、ともにいること(ともに食べること)、交換や贈与といった、コミュニケーションのありようについて、あらためて考えることになった。本論文では、「誰のものでもあって、誰のものでもない時間・空間」について、具体的な実践事例をもとに概念的な整理をおこない、おもにコミュニケーション論の観点から「コモニング」の意味や価値をとらえなおしてみたい。