人工透析研究会会誌
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Polyvinylalcohol膜による血漿交換療法 溶質透過能の臨床的検討
中西 太一馬場 操芝本 隆斉藤 博横川 正之中川 宗一
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1982 年 15 巻 6 号 p. 809-814

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抄録
臨床例において, 膜分離法による血漿交換療法 (以下PE) 施行中に, 膜の各種血中タンパクの透過能が, 実際経時的にどう変化するかについては, よく知られていない. 今回われわれは, polyvinylalcohol膜 (以下PVA膜) のPEで, 開始時と終了時に各種血中タンパクのsieving coefficient (以下SC) および, 終了後の膜の形態変化につしこて検討した. 対象は, 家族性高コレステロール血症の16歳の男児を含む5症例で, のべ22回のPVA膜によるPEである. 交換血漿量は原則として, 体重の5%とし, 開始時と終了時に分子量1.2×104-1×106の7種の血中タンパクのSCを測定した. さらに, 家族性高コレステロール血症の症例 (症例1) と他の脂質正常の症例 (症例5) において, LDL (分子量2×106), VLDL (分子量1×107) のSCも測定した. 7種の血中タンパクのSCは, いずれも0.8以上であり, 開始時と終了時で有意の変化はなく, 分子量の増大に伴うSCの低下はみられなかった. 症例1と5で, LDL, VLDLのSCはいずれも0.8以上で, 開始時と終了時で有意の低下をみとめなかった. 症例1については, PEにより血中総コレステロールの有意の低下をみとめた. PE後のPVA膜の走査電顕写真では, 高コレステロール血症の症例1と脂質正常の症例2で明らかな差はなかった. 膜の溶質透過能は, 溶質の分子量, 時間の経過, 溶質の種類の数, 濃度等により左右される, In vitroの阻止曲線と, 除去を目的とする溶質の分子量だけでは, 臨床上の実際の膜透過性およびその経時的変化を評価するのはむずかしい. PVA膜を臨床例に使用した検討では, 血中各種タンパク, LPL, VLDLの透過性は高く, 経時的に劣化しないことがわかった. PVA膜によるPEで, 家族性高コレステロール血症でのlipoprotein除去が可能であることが, 示唆された.
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© 社団法人 日本透析医学会
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