人工透析研究会会誌
Online ISSN : 1884-6203
Print ISSN : 0288-7045
ISSN-L : 0288-7045
術後急性腎不全対策
遠藤 幸男羽田 一博井上 仁今野 修寺西 寧芳賀 志郎神岡 斗志夫永峯 堯元木 良一本多 憲児
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 16 巻 1 号 p. 27-31

詳細
抄録

昭和41年1月1日より昭和57年4月30日までの期間中、 われわれの教室における手術例数5016例中、 術後急性腎不全の発生は89例 (1.8%) であり、 生存率は34.8%と低率であった。 しかし昭和50年より術後急性腎不全の治療方針として, 1) CH2Oによる早期発見, 2) 利尿剤大量療法, および3) それが無効の場合の早期頻回の血液透析などを採用したところ, 昭和50年をさかいにして, 生存率は前期18.8%より, 後期43.6%に改善した. 治療法別の治療成績は利尿剤大量療法単独使用21例中8例 (38%), 腹膜灌流 (以下PD) 施行群31例中4例 (13%), 血液透析 (以下HD) 施行群29例中15例 (52%), PD・HD併用群8例中4例 (50%) を救命した. 生存例の透析開始時期をみると, PD施行生存4例の全例は急性腎不全と診断されてから2日以内に, HD施行13例 (87%) は3日以内に, PD・HD併用生存4例の全例が3日以内に治療を開始されており, 早期透析が好成績に関係していると考えられた.
呼吸不全, 心不全, 肝不全, 消化管出血など腎以外の臓器不全の合併との関係では、 腎以外に臓器不全の合併のない例の生存率100%, 1臓器不全例52.9%, 2臓器不全40.0%, 3臓器不全29.6%, 4臓器不全11.1%であり, 臓器不全合併数と予後は密接に関係していた. 術後急性腎不全に対しては, CH2Oによる早期発見, 利尿剤大量療法無効時の早期透析, 腎以外の臓器不全対策, 特にSwan-Ganz Catheterによる循環動態把握の下にanoxia予防のための適切な呼吸管理, 消化管出血予防のためのcimetidine, マーロックスの使用が重要であった.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top