人工透析研究会会誌
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16 巻, 1 号
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  • 血液ろ過法による腎不全ヘモジデローシスの治療
    甲田 豊, 柳原 マサ子, 大原 一彦, 中野 正明, 吉田 和清, 田中 容, 下条 文武, 荒川 正昭, 杉田 収
    1983 年 16 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    私達は, 人工弁置換術後の急性腎不全に, 高度の機械的溶血を伴い, 大量の輸血を要した症例を経験し, 輸血性ヘモジデローシスの治療に若干の検討を試みた.
    症例; 26歳, 女性. 14歳時, 心内膜床欠損根治術, 19歳時, 心房中隔欠損根治術と僧帽弁置換術を行った. 昭和54年 (24歳) より心不全症状が出現, 56年6月2日三尖弁置換術と僧帽弁修復術を行った. 術後出血多量のため再開胸を行い, その後急性腎不全に陥った. 著しい機械的溶血が持続し, 半年間で120単位の輸血を受け, 輸血性ヘモジデローシスを合併した. 7ヵ月後, 血液透析はほぼ離脱できたが, GFRは5.2ml/分程度であった. 輸血性ヘモジデローシスに対して, deferoxamine, ビタミンCと血液ろ過法を併用した. 1回の血液ろ過で, ろ液と翌日の尿中に, 約20mgの鉄が排泄された. 週1回, 7ヵ月間行ったところ, 皮膚色素沈着の軽減, 肝機能や心不全の改善, 血清フェリチン値の低下等をみたが, 肝CT所見, 骨髄のヘモジデリン沈着等は不変であった. 長期血液透析を受けている腎不全患者に輸血性ヘモジデローシスを合併することは多くないが, deferoxamine, ビタミンCと血液ろ過法の併用は, 試みるべき治療法であると思われる.
  • 三浦 克弥, 山本 憲彦, 大畑 和義, 並木 重隆, 岩井 雄司, 平 仁司, 三羽 啓史, 武藤 巌, 熊谷 悦子
    1983 年 16 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我国の透析患者の心筋梗塞死は4.6%であるが, 透析患者に虚血性心疾患が多発するか否かには議論が多い. 透析患者には冠動脈造影を行うことが従来より禁忌と考えられたため冠動脈造影法による検討報告は少ない. 今回我々は21名の透析患者に冠動脈造影を行い透析患者の冠動脈硬化症を検討した.
    シネ透視により41名の透析患者の冠動脈石灰化の有無を観察した. 9名 (22%) に冠動脈石灰化を認め透析期間が長い傾向があった (p<0.02).
    胸痛や息切れを示した21名の透析患者に対し両心カテ, 左室造影, 冠動脈造影を行った. 70%以上の冠動脈狭窄を示したのは8例であった. 透析1年以上と以下の2群間では発生頻度に差がなかった. 冠動脈石灰化病変は有意狭窄を1例も合併していなかった. 我々の検討では長期透析により冠動脈の石灰化がひきおこされるが有意病変との関連はないと思われた. また有意狭窄群と非有意狭窄群の2群間において年齢, T. chol, HDL-C, CTR, 心係数, 左室拡張終期圧に差がなかった.
    Treadmill運動負荷試験はBruce変法プロトコールに従い施行され、 感度86%, 特異性83%であり, 通常人と同様に透析患者に対しても有用であると思われた.
    肺水腫を惹起しやすい6名のうち1人を除いて有意狭窄病変はみられなかった.
    21名の冠動脈造影は検査後透析を行い合併症をみなかった. 最近では透析患者に対しても冠血行再建術が成功裏に行われており, 適応があれば透析患者に対しても積極的に冠動脈造影を行う必要があると考える.
  • 千葉 栄市, 畠山 義典, 新居 正一, 鈴木 敏幸, 大庭 志摩子, 野呂 文江, 菅原 剛太郎
    1983 年 16 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析症例にてhemodialysis (HD), hemofiltratin (HF), sodium gradientmethod (SGM), およびcell wash dialysis (CWD) におけるurea-N, creatinine, guanidino compoundsのremoval rateとreduction rateを検討した.
    血液浄化法前の血漿Naは137±3mEq/l, 赤血球内Naは10.3±2.9mEq/l, 血漿Kは4.1±0.9mEq/l, 赤血球内Kは106.3±4.9mEq/l, 血漿urea-Nは62±16mg/dl, 赤血球内urea-Nは55±13mg/dl, 血漿creatinineは10.7±2.3mg/dl, 赤血球内creatinineは10.2±1.9mg/dl, 血漿guanidinosuccinic acid (GSA) は14.9±5.9μM/l, 赤血球内GSAは4.8±2.7μM/l, 血漿guanidinoacetic acid (GAA) は3.6±1.4μM/l, 赤血球内GAAは3.7±1.7μM/l, 血漿guanidine (G) は4.1±1.8μM/l, 赤血球内Gは8.5±2.9μM/l, 血漿methglguanidine (MG) は4.1±1.8μM/l, 赤血球内MGは6.2±2.6μM/lであった.
    血液浄化法前でurea-N, creatinineの赤血球内蓄積性は認められなかったが, G, MGでは赤血球内蓄積性が認められた.
    各血液浄化法 (HD, HF, SGM, CWD) における血漿のurea-N, creatinineのremoval rateは50-80%と高率であったが, G, MGのremoval rateは40-70%とやや低値を示した. 赤血球内のarea-N, creatinineのremoval rateも30-70%であったが, G, MGのremoval rateは8-30%とさらに低値を示した.
    CWDの透析液高Na phaseにおける赤血球内のuremic toxinsのremoval rateには優位性は認められなかった.
    各血液浄化法前後における血漿のurea-N, creatinineのreduction rateは40-70%と良好であったが, G, MGのreduction rateは30-40%と低値を示した. 赤血球内urea-N, creatinineのreduction rateは40-60%であったが, G, MGのreduction rateは20-30%と低値を示した.
    赤血球内のuremic toxinsのreduction rateと血漿のuremic toxinsのreduction rateの比を検討すると, 赤血球内G, MGの除去にはHFが有効であった.
  • 遠藤 幸男, 羽田 一博, 井上 仁, 今野 修, 寺西 寧, 芳賀 志郎, 神岡 斗志夫, 永峯 堯, 元木 良一, 本多 憲児
    1983 年 16 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    昭和41年1月1日より昭和57年4月30日までの期間中、 われわれの教室における手術例数5016例中、 術後急性腎不全の発生は89例 (1.8%) であり、 生存率は34.8%と低率であった。 しかし昭和50年より術後急性腎不全の治療方針として, 1) CH2Oによる早期発見, 2) 利尿剤大量療法, および3) それが無効の場合の早期頻回の血液透析などを採用したところ, 昭和50年をさかいにして, 生存率は前期18.8%より, 後期43.6%に改善した. 治療法別の治療成績は利尿剤大量療法単独使用21例中8例 (38%), 腹膜灌流 (以下PD) 施行群31例中4例 (13%), 血液透析 (以下HD) 施行群29例中15例 (52%), PD・HD併用群8例中4例 (50%) を救命した. 生存例の透析開始時期をみると, PD施行生存4例の全例は急性腎不全と診断されてから2日以内に, HD施行13例 (87%) は3日以内に, PD・HD併用生存4例の全例が3日以内に治療を開始されており, 早期透析が好成績に関係していると考えられた.
    呼吸不全, 心不全, 肝不全, 消化管出血など腎以外の臓器不全の合併との関係では、 腎以外に臓器不全の合併のない例の生存率100%, 1臓器不全例52.9%, 2臓器不全40.0%, 3臓器不全29.6%, 4臓器不全11.1%であり, 臓器不全合併数と予後は密接に関係していた. 術後急性腎不全に対しては, CH2Oによる早期発見, 利尿剤大量療法無効時の早期透析, 腎以外の臓器不全対策, 特にSwan-Ganz Catheterによる循環動態把握の下にanoxia予防のための適切な呼吸管理, 消化管出血予防のためのcimetidine, マーロックスの使用が重要であった.
  • 菅本 英雄, 須合 美津子, 玉置 寛子, 小川 きみ代
    1983 年 16 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    環境要因としての家庭は患者の自己管理に大きな影響を与えると報告されている. 透析患者の70%が既婚者であり, また夫婦関係が家庭に及ぼす影響も大きいことからしても, 夫婦間に内在する問題は無視しえないと思われる.
    われわれは, 既婚男性患者16名を対象に夫婦生活の実状を調べ, 夫婦関係と臨床透析成績との関連について検討した.
    夫婦関係および透析成績は, それぞれスコア法を用いて定量化し, 夫婦スコア, 透析スコアと称した. 夫婦スコアは協力度, 経済度, 性的満足度の3項目から成り, 透析スコアは体重増加・血圧・血清総タンパク・Ht・BUN・血清ナトリウム・血清カリウム・CTRの8項目のスコアとした.
    夫婦スコアと透析スコアとには相関関係が認められ, 夫婚スコアの高いものほど透析スコアも良好の傾向にあった. また, 夫婦関係と性生活の関連を重視する傾向がみられたが, 夫婦スコアにおける性的満足度は他の尺度より, 夫婦関係に及ぼす影響力としては下位にあった.
    以上の結果より, 円満な夫婦関係は透析成績に好影響を与えることを確認できたと考えられる. また, 夫婦関係にとっては, 性生活よりも, 患者の家庭や妻に対する姿勢がより影響するものと考えられた.
  • 樋口 順三, 樋口 千恵子, 樋口 清子, 本間 孝子, 小沢 喜久夫, 大島 昌子, 板垣 一郎, 酒井 清孝
    1983 年 16 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    無尿で安定した長期血液透析45例 (男30, 女15) について蛋白摂取量を検討するために透析から次の透析にかけての体重, BUNなどの臨床データを用い尿素のkinetic modelによって尿素産生量を計算した. Gotchの式によりPCR (protein catabolic rate) の値を求めてこれを蛋白摂取量とみなし, 肥満度, 年齢および昭和54, 55, 56年の各平均値を比較検討することにより, PCRはわが国の透析患者にも臨床上食事指導を行う上で十分利用できることがわかった.
    尿素, 尿酸, クレアチニンの各N値による産生量およびNPNを用いた産生量の各値に6.25を乗じた数字はPCRに比べて前者は低値を, 後者は高値を示し, やはり蛋白摂取量の計算にはPCRを使用することがより妥当と考えられた.
    PCRの問題点としては食箋から計算した蛋白摂取量と比較して約10%低い値を示す傾向が見られ, また透析間隔が長くなるにつけて, 有意に低値を示すことで, 実際の使用にあたって注意が必要である.
    食塩摂取量についてもthree pool modelを応用した計算式からNa除去量を算出することが可能であり, 透析治療の多様化に対応できるように栄養士が他の医療スタッフとよく話し合い, それぞれの透析患者についての治療方法の内容を十分に理解し, 除水量や透析液Na濃度などを考慮した上で, 患者の生活の実態に合った食事指導を行うことが何よりも必要である.
  • 西 秀樹
    1983 年 16 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    全国の透析患者数は49,000名を越えたが, 当新生会でも, 1971年62名であった透析患者が現在392名と増え, それとともにシャント手術数も過去11年間で2,000例, 最近4年間では毎年300例近くを数えるようになった. また人工血管手術例も徐々に増えているが, Gore Tex使用が殆んどを占め, そのうち, 外シャントは14例である. 年齢は26歳-65歳, 平均48歳, 透析年数は4年-12年で平均7.4年, 男性6名, 女性8名で最長例は32ヵ月 (昭和57年7月現在) で現在も開存中である. 14例中, 1例は9ヵ月後に死亡, 他の1例は21ヵ月後に使用不能となり除去した. さらにもう1例は, 感染と閉塞を繰返すため21ヵ月後にGore Texを除去し, CAPDに移行したが, 厳重な管理にもかかわらず腹膜炎を頻発し, 約1年間でCAPDをうちきった. その後移植したDardik Biograftも数ヵ月で静脈側の破綻を来たし, 現在は左鼠径部にGore Texの外シャントを造設している. これら14例に共通した特徴は, 静脈が細い, 血流が不十分, 血栓と閉塞を来たしやすい, 手術回数が多い, 透析や手術に対し強い不安を持つ等が挙げられるが, Gore Texを移植して外シャントに切換えてからは比較的シャント維持がスムーズとなった. 外シャントの長所をまとめると, 手術手技やdeclottingが容易, 術直後の使用が可能, 穿刺の煩わしさがなく苦痛を与えない. 血管損傷もない, したがって動脈瘤の形成や血腫, 感染などの合併症も少なく, グラフトの寿命も長くなる. シャント量が過剰にならない. 静脈側が細くても動脈側の血流さえ確保できれば透析は可能である. また家庭透析者, 長期透析者, 老人透析者, 女子透析者の一部には内シャントをかたくなに拒否し, 外シャントを強く希望する患者がいるのも事実である. 種々の欠点も含め, 今後さらに検討を続けたい.
  • CTによる早期診断
    福田 和雄, 斉藤 喬雄, 京極 芳夫, 山陰 敬, 佐藤 博, 黒沢 孝成, 木下 康通, 古山 隆, 吉永 馨, 木崎 徳, 工藤 健一
    1983 年 16 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 慢性透析患者の貧血に対し鉄剤投与や輸血が行われる事が多い. この際の合併症であるヘモジデローシスは従来早期診断が困難であり, 血清鉄値, UIBC, 血清フェリチン値, 臨床経過等により総合的に推定されるのみであった. しかしCTの出現により, 鉄の肝臓への異常蓄積が早期にかつ直接的に診断できるようになった. このような観点から我々は鉄剤投与および輸血を受けた透析患者25名に肝CTを施行した.
    結果: 血清フェリチン値と鉄投与量の相関 (r=0.491, 0.01<p<0.02) に比べ, 肝CT値と鉄投与量の間には良い相関が得られた (r=0.714, p<0.001). もともと肝機能障害のある3例を除く22例中10例に一過性のトランスアミナーゼ値 (以下Tra.) の上昇がみられ, 残り12例は経過中Traは正常であった. Traの上昇のあった群はTraの正常な群に比べて有意に鉄投与量が多く, また有意に肝CT値が高かったので, 鉄剤投与の結果肝ヘモジデローシスがおきTraが上昇したものと考えられる. これに対し, 血清フェリチン値とTraの上昇の間には相関はみられなかった. また輸血によっても肝CT値は上昇する傾向がみられた. 肝CT値の上昇とともに脾CT値もわずかながら上昇した. 鉄剤投与を中止して6ヵ月後にCTを再検してみると, 肝CT値はほとんど変化せず, 鉄の肝臓への沈着は不可逆的である事が示唆された.
    以上の結果により, 肝CT値は血清フェリチン値よりも正確にヘモジデローシスを反映しており, その早期診断に有用と思われる. 鉄剤投与または輸血の施行されている透析患者には経過を追って肝CTを施行し, 止むを得ない場合でも肝CT値80 H. U. を越えないようにすべきである. ただし肝CTには鉄欠乏に関する情報はなく, 従来通り血清フェリチンも併せて参考にすべきであろう.
  • 山本 啓介
    1983 年 16 巻 1 号 p. 55-66
    発行日: 1983/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    25名の血液透析者を対象に, 透析液のアルカリ化剤として用いられているacetateの循環動態に与える影響を検討するために, 透析回路を用いた体外循環下で透析液を灌流することなく, 酢酸ソーダ, 重曹, 生理食塩水を注入した. 生理食塩水注入では有意の変化を示さなかったが, acetate負荷によりtotal peripheral resistanceは低下し, その変化率と血清acetate濃度の間には負の相関を認めた. そしてtotal peripheral resistanceの低下とcardiac outputの上昇によりmean blood pressureは一定に保たれた. bicarbonate負荷時にも, 変化の程度は小さいもののacetate負荷時と同様の変化を認めた.
    ここで個々の症例ごとに検討すると, 負荷開始前のtotal peripheral resistanceの価から対象患者を3群に分けることができた. Group Iはbasal vascular toneの低い低血圧群で, acetateおよびbicarbonateの負荷によりtotal peripheral resistanceの低下を認めなかった. 高血圧を示すGroup IIでは, 2剤のいずれの負荷でもtotal peripheral resistanceの有意の低下を認めた. Group IIIは正常血圧群でありacetateの負荷によりtotal peripheral resistanceの有意の低下を認めたが, bicarbonate負荷では低下を認めなかった. 以上の成績からGroup IIIは, 透析液のアルカリ化剤として重曹を用いることが望ましい患者群と考えられる.
    またいわゆる酢酸透析と重曹透析の二重盲検試験から患者をacetate intolerance群とacetate tolerance群の2群に分けることができた. おのおのについてそれぞれacetate負荷による影響を比較検討したところ, 2群を分ける有用な指標はacetate負荷時の血清acetate濃度であると考えられた. したがってacetate intolerance群では, acetate代謝障害により高acetate血症を呈し, このため種々の不快症状が発現するものと考えられる.
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