人工透析研究会会誌
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透析患者の冠動脈硬化症の検討
三浦 克弥山本 憲彦大畑 和義並木 重隆岩井 雄司平 仁司三羽 啓史武藤 巌熊谷 悦子
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1983 年 16 巻 1 号 p. 7-15

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抄録

我国の透析患者の心筋梗塞死は4.6%であるが, 透析患者に虚血性心疾患が多発するか否かには議論が多い. 透析患者には冠動脈造影を行うことが従来より禁忌と考えられたため冠動脈造影法による検討報告は少ない. 今回我々は21名の透析患者に冠動脈造影を行い透析患者の冠動脈硬化症を検討した.
シネ透視により41名の透析患者の冠動脈石灰化の有無を観察した. 9名 (22%) に冠動脈石灰化を認め透析期間が長い傾向があった (p<0.02).
胸痛や息切れを示した21名の透析患者に対し両心カテ, 左室造影, 冠動脈造影を行った. 70%以上の冠動脈狭窄を示したのは8例であった. 透析1年以上と以下の2群間では発生頻度に差がなかった. 冠動脈石灰化病変は有意狭窄を1例も合併していなかった. 我々の検討では長期透析により冠動脈の石灰化がひきおこされるが有意病変との関連はないと思われた. また有意狭窄群と非有意狭窄群の2群間において年齢, T. chol, HDL-C, CTR, 心係数, 左室拡張終期圧に差がなかった.
Treadmill運動負荷試験はBruce変法プロトコールに従い施行され、 感度86%, 特異性83%であり, 通常人と同様に透析患者に対しても有用であると思われた.
肺水腫を惹起しやすい6名のうち1人を除いて有意狭窄病変はみられなかった.
21名の冠動脈造影は検査後透析を行い合併症をみなかった. 最近では透析患者に対しても冠血行再建術が成功裏に行われており, 適応があれば透析患者に対しても積極的に冠動脈造影を行う必要があると考える.

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© 社団法人 日本透析医学会
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