人工透析研究会会誌
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慢性腎不全患者の高ガストリン血症について
武藤 重明村山 直樹瀧 滋彦加藤 謙吉鈴木 宗弥石橋 明人武田 和司生沼 孝夫寺尾 統彦浅野 泰細田 瑳一宮田 道夫
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1983 年 16 巻 2 号 p. 91-96

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抄録
消化管出血は, 慢性腎不全でよく知られた合併症である. 種々のガストリン代謝における研究より, 腎がガストリン破壊の主要部位であることが明らかにされた. ここで, 我々は, 免疫活性ガストリン (IRG) が, いわゆる “uremic gastropathy” に重要な役割を演じているかどうか調べるため, 2種類の抗血清-Rehfeldによってつくられた2604……Total IRG (total gastrin) を測定, 矢内原によるR2702……G34を測定-を使ったRIAによってIRGを測定した. 33名の慢性腎不全患者 (血液透析者24名, 非透析者9名) および12名の正常対照群において, 空腹時, 透析前後および食事負荷前後に採血を行った. 空腹時total gastrin値は, 透析の有無にかかわらず, 慢性腎不全患者で有意に高かった. また, 血清クレアチニン値とは有意な相関を認めなかった. 透析により, total gastrin値は37%減少したが, G34は有意な変化を示さなかった. 抗血清2604により, 灌流液で少量の免疫活性を認めた. 食後のガストリン値の変化については, total gastrin, G34ともに食後60分で最高値に達し, 高値の状態が遷延した. 以上より, 慢性腎不全患者血中に主に増加しているガストリンはG34であり, またG34はG17に比し1/6の酸分泌能しか有していないことからも, 高ガストリン血症と酸分泌とは直接結びつかないように思われた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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