人工透析研究会会誌
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16 巻, 2 号
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  • 外山 誠, 堀内 敏行, 木野内 喬, 田中 孝司, 吉田 尚義, 中村 一路, 清水 直容, 山下 節, 大崎 なつ子, 佐藤 松子, 福 ...
    1983 年 16 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腹水貯留の著しい慢性血液透析患者に腹水濾過濃縮静注法を行い好結果を収めた.
    症例は64歳の女性, 20年前多発性嚢胞腎で, 6年前腎盂腎炎および敗血症で両側腎摘除した後, 血液透析を続けていたが, 肝嚢胞の門脈圧迫により腹水貯留が著明となり, 入院して腹腔穿刺および腹膜透析を行うが腹水が軽減しなかった. 低血圧, 低蛋白血症や多量の腹水貯留のため嘔吐がしばしばみられた. 腹水は清澄, 淡黄色, 総蛋白4.1g/dl, 細胞成分は少なかった.
    旭メディカル社の濾過器, 濃縮器等を用いて腹水を30ml/minの速度で濾過し, 3時間かけて濃縮, 直後に静注しない場合は-80℃で凍結保存した. 穿刺は侵襲の少ないメディカット針16G側孔付を用いた.
    腹水濾過濃縮を4回, 静注を8回行った. 本法開始前後各6ヵ月間を比較すると, 除去腹水量は本法開始前の3回腹腔穿刺して6,860mlに対して開始後は4回穿刺して13,400mlと倍増し, 血漿製剤使用量は開始前3,250mlに対して開始後0mlと激減している. 開始前に対して開始後の収縮期血圧は上がり, 体重, 腹囲, 嘔吐回数は減少したが, 血清総蛋白には差がなかった. また, 発熱等副作用は経験しなかった.
    本法は入院せずに簡単な操作で行うことができ, 患者自身の蛋白喪失を伴わないため血漿製剤が不要であり, 腹水貯留による嘔吐回数が減少して食事が十分に摂取でき, 歩行姿勢も楽になる等, 血圧低下と低蛋白血症とに同時に有効な方法であると考えられた.
  • EVAL膜による補体活性化時のヘパリンの影響について
    中西 功, 飯田 喜俊, 湯浅 繁一, 椿原 美治, 河島 利広, 横川 朋子, 友渕 基, 稲井 真弥, 赤垣 洋二
    1983 年 16 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    EVAL膜による補体活性化能と白血球減少との関係を, 前回報告したcuprophan膜およびPMMA膜と比較するとともに, EVEL膜にて無ヘパリン透析を施行し, 通常ヘパリン透析との比較により補体活性化および白血球減少に及ぼすヘパリンの影響について検討した.
    その結果, 1) EVAL膜はcuprophan膜と同様補体系のalternative pathwayを活性化したが, その補体活性化能はcuprophan膜の約1/2程度であった. またEVAL膜による透析開始時の-過性の白血球減少もcuprophan膜使用時の約1/2程度であった. 2) EVAL膜による無ヘパリン透析と通常ヘパリン透析との間には白血球減少率に有意の差は認められなかった. この原因を確かめるためin vitroの実験を行った. EVAL膜による補体活性化はヘパリンによりdose-dependentに阻止されたが, 通常ヘパリン透析時の血中ヘパリン濃度 (1u/ml以下) では阻止効果は認められなかった.
    以上の結果より, 透析開始早期にみられる-過性の白血球減少と透析膜が持つ補体活性化能との関連がより-層明らかなものとなった. また通常透析時に使用するヘパリン量では, EVAL膜による補体活性化ひいては白血球減少にはほとんど影響を及ぼさないものと思われた.
  • 池田 弓子, 長沢 孝, 畝田 進, 高木 信嘉, 安田 元, 小田 寿, 金子 好宏, 岩渕 潔
    1983 年 16 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    向精神薬のhaloperidol使用者にミオグロビン血症を呈した急性腎不全の発生をみた稀な2例を経験したので報告する. 症例1, 55歳, 男性. 1978年8月退行期精神病にて某精神病院へ入院. 同年11月からhaloperidolの投与を受け, 投薬18日頃より, 発熱, 発汗, 嚥下障害, 頻脈, 軽度の意識障害など出現し, 悪性症候群と診断され, 12月はじめhaloperidolの投与は中止された. その後乏尿から無尿となり, 高窒素血症が出現し, 急性腎不全にて12月10日当院へ入院. ただちに血液透析を施行し, 約1ヵ月後には腎不全の回復をみた. 入院時, GOT, LDH, CPK, 血中, 尿中ミオグロビンの高値を示した. 筋生検では神経原性の変化を示し, 腎生検では著変を認めなかった. 症例2, 42歳, 男性. 1980年はじめより, 舞踏病のため抗痙攣剤およびhaloperidolが投与されていたが, 1982年1月haloperidolを, 続いて抗痙攣剤を中止したところ, 不随意運動が激しくなり, 2月17日haloperidol 5mgを筋注した. 18日より乏尿となり, 20日より腹膜灌流を施行. 24日血液透析目的にて当院へ入院. 11回血液透析を施行し, 腎不全の回復をみた. 経過中, GOT, LDH, CPK, 血中ミオグロビンの高値を認めた. 2症例の急性腎不全の原因はrhabdomyolysisによると考えられ, ミオグロビン血症とhaloperidolとの関係について考察を加えた.
  • 武藤 重明, 村山 直樹, 瀧 滋彦, 加藤 謙吉, 鈴木 宗弥, 石橋 明人, 武田 和司, 生沼 孝夫, 寺尾 統彦, 浅野 泰, 細田 ...
    1983 年 16 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    消化管出血は, 慢性腎不全でよく知られた合併症である. 種々のガストリン代謝における研究より, 腎がガストリン破壊の主要部位であることが明らかにされた. ここで, 我々は, 免疫活性ガストリン (IRG) が, いわゆる “uremic gastropathy” に重要な役割を演じているかどうか調べるため, 2種類の抗血清-Rehfeldによってつくられた2604……Total IRG (total gastrin) を測定, 矢内原によるR2702……G34を測定-を使ったRIAによってIRGを測定した. 33名の慢性腎不全患者 (血液透析者24名, 非透析者9名) および12名の正常対照群において, 空腹時, 透析前後および食事負荷前後に採血を行った. 空腹時total gastrin値は, 透析の有無にかかわらず, 慢性腎不全患者で有意に高かった. また, 血清クレアチニン値とは有意な相関を認めなかった. 透析により, total gastrin値は37%減少したが, G34は有意な変化を示さなかった. 抗血清2604により, 灌流液で少量の免疫活性を認めた. 食後のガストリン値の変化については, total gastrin, G34ともに食後60分で最高値に達し, 高値の状態が遷延した. 以上より, 慢性腎不全患者血中に主に増加しているガストリンはG34であり, またG34はG17に比し1/6の酸分泌能しか有していないことからも, 高ガストリン血症と酸分泌とは直接結びつかないように思われた.
  • 小林 敦子
    1983 年 16 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    人工透析療法の発達は患者の長期生存を可能にし, 社会復帰を容易としている. しかし生涯にわたり透析療法を続けねばならない患者にとって, 精神的, 肉体的な負担は現在でも多大なものである. このような事態に対する患者の反応は, 患者の精神的発育の程度により影響される. 私達は運動療法後社会復帰したが, 精神障害をきたした男性患者の1例を取り上げ, 透析患者の看護について検討した. 症例は32歳男性, 未婚, 昭和48年4月から慢性腎不全のため血液透析を開始, この時, 会社を辞めた. その後家でブラブラして過ごしていたため, 社会復帰するよう指導したが, 就職しても長続きせず, 軽い労作でも動悸, 息切れを訴えていた. そこで体力に自信をつけて社会復帰する目的で54年12月から6ヵ月間運動療法 (心筋梗塞プログラム応用) を行った. その結果, 脈拍数, 血圧ともに運動療法実施後は, 運動負荷が増えているにもかかわらず, 脈拍数は負荷前より減少し, 血圧の上昇は軽度となった. 検査所見でもHtの上昇が見られた. 5月には, 体力に自信もつき自ら職を捜し就職した. 56年5月, 透析中ショックとなったが, 回復後急に不穏状態となり多弁, 異常な行動, 不眠, 幻聴などの精神異常をきたした. 57年1月にも約2週間同様の精神異常を認めている. 本例は幼児時代から母親が病弱なため, 一切の世話を父親から受けるという家庭環境にあって, 母親への不満と父親への依存傾向が増長されたと推測され, これらの状況が現在の未熟な精神状態に大きく影響していると考えられた. YG性格テストでは受動的, 無気力な性格が示され, ロールシャッハテストでは自我の弱い, 精神的未熟さが指摘された. 本例の看護指導において, 肉体的には運動療法により, 良い結果を得たが, 精神的には支持的な指導を続けるべきであった.
    透析患者の看護指導は各患者の精神的発育過程および家族関係を理解した上での指導が重要と考えられた.
  • 村山 直樹, 飯尾 利弘, 桜林 郁之介, 瀧 滋彦, 加藤 謙吉, 武藤 重明, 鈴木 宗弥, 石橋 明人, 武田 和司, 寺尾 統彦, ...
    1983 年 16 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血清クレアチニン7mg/dl以上の慢性腎不全患者および透析患者を対象に血清トコフエロールならびにHDL含有トコフェロールを測定し健常群と比較検討した. トコフェロールは, 高速液体クロマトグラフィーを利用した螢光法にて測定し, HDLは沈澱法にて分離後, コレステロール, リン脂質, トリグリセリド, アポ蛋白Aを測定し, その和を総HDLとした. 血清トコフエロール濃度は, 健常群に対し慢性腎不全患者群で有意な上昇 (p<0.05) を認めたが, 透析患者群では有意差を認めなかった. しかし, 長期透析症例では低下傾向を認めた. HDL分画のトコフェロール濃度は, 健常者群に対し, 慢性腎不全患者群, 透析患者群で著明な低下を認めた (p<0.001). 総HDLに対するHDL分画中のトコフエロール濃度の比は, 健常者群に対し慢性腎不全患者群, 透析患者群で有意な低下 (p<0.01) を認め, 特に透析の長期化に伴い低下傾向を認めた. 以上の結果は透析の長期化に伴いHDL含有トコフェロールの低下を意味するが, HDLは構造上不飽和脂肪酸を多く含有し, トコフェロールの低下は不飽和脂肪酸から過酸化脂質形成を促進させHDLに何らかの障害をきたす可能性を示唆する.
  • 岡 徹, 船江 仁美, 平林 俊明, 小林 登, 中治 隆宏, 三木 章三, 後藤 武男, 藤田 嘉一
    1983 年 16 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    今回我々は血液透析患者の脂質代謝状態につき, コレステロールのturn overの面より検索を試み, コレステロール結合能 (以下SCBRと略す) を測定し, 若干の知見を得たので報告する. 腎機能別SCBR値は, 非糖尿病群ではGFR>50ml/minのコントロール群 (N=12, SCBR=37.5±13.8mg/dl) に比し, GFR<10ml/minの腎不全群 (N=16, SCBR=27.4±12.1mg/dl) および血液透析群 (N=16, SCBR=18.5±3.6mg/dl) ではp<0.1と有意の低下を示した. また糖尿病群においても, コントロール群 (N=23, SCBR=32.8±7.5mg/dl) に比し, 腎不全群 (N=7, SCBR=21.3±8.7mg/dl) および血液透析群 (N=7, SCBR=20.3±11.5mg/dl) でp<0.1の有意な低下を示し, 腎機能低下とともに, SCBRの低下傾向がみられた. また長期透析例で, 糖尿病症例に異常低値を示す例が多く認められた.
    SCBRと血清コレステロール値, 中性脂肪, HDL-コレステロールとの間には有意の相関は見られなかった. またSCBRとLCAT (Lecithin cholesterol acyltransferase) 活性の間にγ=0.54と軽度の相関を認め, またSCBRとApo Aとの間にもγ=0.53と軽度の相関傾向を認めた. 1回約5時間の血液透析の影響を13例につき検討したが, 全体に透析後のSCBRの上昇傾向をみた. またin vivoにてuremic middle moleculesをratに静注後SCBRを測定したが, 非投与群に比して有意の抑制が認められた.
    以上の結果より, 腎不全状態ではSCBRの低下よりみてコレステロールの転送障害が存在し, 血管障害の進展に関与するものと思われる. このSCBRの本体についてはなお不明瞭であり, その低下機構には他の抑制因子の介在, またHDLの機能との関連が想定された.
  • 主としてin vitroにおける除去率, およびdialysanceについて
    入江 康文, 林 弘美, 勝美 一治, 北沢 昭治, 本吉 等, 嶋田 俊恒, 小高 通夫, 小針 孝司
    1983 年 16 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 1983/04/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の高血圧症に対して種々の降圧剤が使用されている. 高度の腎機能障害を有する患者に対しては他の薬剤と同様に, 降圧剤についても, 蓄積性, 透析による除去率, dialysance等を知ってから使用する必要がある. 今回われわれはCa2+拮抗性循環改善剤, 塩酸ニカルジピンについてウシ血液を用いてin vitroにおける透析による除去率, dialysanceを測定した. その結果, 透析120分後の除去率は15.8±1.8%であり, 透析開始60分後のdialysanceは4.5±1.3ml/minであり, 血中半減時間は456±81分であった. すなわち塩酸ニカルジピンは透析により, わずかに除去されることがわかった.
    次に高血圧症を伴う長期透析患者2例に対し塩酸ニカルジピンを1日量40mg-60mg, 14日間経口投与して, その血中濃度を, 毎回の透析前後に測定した. その結果, 蓄積傾向を認めず, 透析による変化も少ないことがわかった.
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