今回我々は血液透析患者の脂質代謝状態につき, コレステロールのturn overの面より検索を試み, コレステロール結合能 (以下SCBRと略す) を測定し, 若干の知見を得たので報告する. 腎機能別SCBR値は, 非糖尿病群ではGFR>50m
l/minのコントロール群 (N=12, SCBR=37.5±13.8mg/d
l) に比し, GFR<10m
l/minの腎不全群 (N=16, SCBR=27.4±12.1mg/d
l) および血液透析群 (N=16, SCBR=18.5±3.6mg/d
l) ではp<0.1と有意の低下を示した. また糖尿病群においても, コントロール群 (N=23, SCBR=32.8±7.5mg/d
l) に比し, 腎不全群 (N=7, SCBR=21.3±8.7mg/d
l) および血液透析群 (N=7, SCBR=20.3±11.5mg/d
l) でp<0.1の有意な低下を示し, 腎機能低下とともに, SCBRの低下傾向がみられた. また長期透析例で, 糖尿病症例に異常低値を示す例が多く認められた.
SCBRと血清コレステロール値, 中性脂肪, HDL-コレステロールとの間には有意の相関は見られなかった. またSCBRとLCAT (Lecithin cholesterol acyltransferase) 活性の間にγ=0.54と軽度の相関を認め, またSCBRとApo Aとの間にもγ=0.53と軽度の相関傾向を認めた. 1回約5時間の血液透析の影響を13例につき検討したが, 全体に透析後のSCBRの上昇傾向をみた. またin vivoにてuremic middle moleculesをratに静注後SCBRを測定したが, 非投与群に比して有意の抑制が認められた.
以上の結果より, 腎不全状態ではSCBRの低下よりみてコレステロールの転送障害が存在し, 血管障害の進展に関与するものと思われる. このSCBRの本体についてはなお不明瞭であり, その低下機構には他の抑制因子の介在, またHDLの機能との関連が想定された.
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