人工透析研究会会誌
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慢性透析患者における不明熱の診断ならびに治療
佐藤 博司川島 洋一郎久保 和雄鈴木 利昭佐中 孜太田 和夫杉野 信博
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1984 年 17 巻 2 号 p. 97-102

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抄録

1971年4月から1983年4月までに当センターおよび関連施設において経験された慢性血液透析患者の不明熱28症例の臨床的検討を行った. 原因疾患は感染症が20例 (71%), 薬剤性2 (7%), 膠原病1 (4%), 不明5 (18%) で悪性腫瘍によるものはなかった. 特に感染症の中では結核症が13例 (46%) と最も頻度が高く, このうち肺外性結核が11例とそのほとんどを占めていた. その他, 尿路感染症は3例にみられ, 移植血管感染例も1例に認められた.
発熱の特徴としては, 最高体温の平均が39℃で, 熱型は弛張熱あるいは間歇熱を呈するものが多く, 透析中または透析直後に発熱しやすい傾向にあった. 診断に関しては, 非結核性のものは比較的高い確診率を得ているが, 結核症では生前確定診断ができたものは3例 (21%) にすぎなかった. 結核症のうち3例でCTスキャン, 超音波検査で, 腹部リンパ節腫大を認め, また治療により消失し, 診断の一助となった. 感染症例のうち, Gaシンチで陽性所見を示したのは1例もなかった. 予後および転帰であるが, 死亡は6例 (21%) でこのうち5例 (83%) は結核症である. これらはその大部分が未治療または治療開始時期の遅れがみられ, 発症より2ヵ月以内に死亡した例である.
以上より透析患者の不明熱に対しては常に結核症の可能性を考え, 早期治療を行う必要がある.

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© 社団法人 日本透析医学会
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