抄録
従来より, 慢性腎不全患者の血清Ca濃度は, 主として透析液Ca濃度により調節が行われてきた. しかし高Ca濃度の透析液使用時には, 透析前後の血清Ca値が著しい変化を示しrenal osteodystrophyの改善および進行の阻止も十分にはできなかった.
今回われわれは1α-OH-D3の経口投与と低Ca透析液との併用により, 血清Ca値の透析中における変化を減少させ, Ca代謝およびrenal osteodystrophyの改善を試みた.
53名の安定期慢性血液透析患者に対し, 1α-OH-D3の経口投与を行い, 透析液Ca濃度を3ヵ月ごとに, 3.5, 3.0, 2.5mEq/lと変化させた. 透析前の血清Ca値が8.0mg/dl以上を維持できるように, 1α-OH-D3の投与量を調整した. 血清P, Mg, AL-Pは月2回, 血清PTH-Cは3ヵ月に1回の測定を行った.
その結果, 1α-OH-D3の投与により透析前の血清Ca濃度は8.0→8.3mg/dlと上昇を示し, 透析後の血清Ca濃度は10.0→8.9mg/dlと低下を示した. 透析間の血清Ca値の変化, すなわち透析前後差は2.0→0.75mg/dlに減少した.
1α-OH-D3の全患者総投与量は7.75μg/dayから36.5μg/dayに増加した. 血清P, Mg, AL-Pは, 若干の上昇を示したが有意差は認められなかった. しかし血清PTH-Cが透析液Ca濃度2.5mEq/l使用時において2.1→3.7ng/mlと有意な上昇を示したことが注目された.
以上のことより, 1α-OH-D3の経口投与と低Ca透析液の併用により, 透析前後の血清Ca濃度差を減少することができ, renal osteodystrophyの改善が期待される. この場合の適正透析液Ca濃度は3.0-2.5mEq/lと思われる.