抄録
慢性腎不全患者の視床下部-下垂体後葉系の機能をみるために, 健常人10例, 食餌療法中の慢性腎不全患者14例, 血液透析中の慢性腎不全患者18例の血漿ADHをラジオイムノアッセイを用いて測定した. ADH値は慢性腎不全患者の2群では健常人に比して有意に高く, また食餌療法中の患者よりも血液透析中の患者において有意に高値を示した.
食餌療法中の患者においては, 血漿ADHと血清クレアチニン, 血漿ADHと有効血漿浸透圧との間に, 有意な正の相関関係をみた. また血漿ADHと血清Caとの間にも有意な負の相関関係をみた.
血液透析中の患者においては, 血漿ADH値は透析後, 透析前に比して有意に低下した. 透析前後とも, 血漿ADHと有効血漿浸透圧との間には有意な正の相関関係をみた. しかし血漿ADHと血清Ca, 血漿ADHとPRA, 血漿ADHとMBPとの間には相関はなかった. また血液透析による血漿ADHの変化と体重の変化についても相関はなかった.
これらの結果よりみて慢性腎不全患者においてADHの分泌は第一義的には有効血漿浸透圧によって調節されているとともに, ADHの不活性化については減少していることが考えられた.