人工透析研究会会誌
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CAPDによる貧血改善の効果
大平 整爾阿部 憲司長山 誠泉 勝子北口 和子川口 和子
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1985 年 18 巻 1 号 p. 27-34

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抄録
当院でCAPDを施行した患者は昭和59年4月末現在10名で, 最長1年6ヵ月, 最短2週間である. 1名のみCAPDが慢性腎不全治療の第1選択であった以外は残る9名全て, 血液透析を一定期間受けた後, 1) blood accessの荒廃, 再作成困難, 2) 水・塩分の管理不良, または, 3) より完全な社会復帰をのぞんでCAPDへ移行した. 原疾患は糖尿病性腎症2名, 慢性腎炎8名であった.
CAPDはTravenol社のシステム (カテーテルおよび接続チューブ) とダイアニール (透析液) で施行しており, これまで2名が繰り返す腹膜炎のためCAPDを中止し血液透析へ復帰している. これら2名を含めて全員の貧血改善の効果は著明でありHb, Hctともに有意な上昇が認められた. 患者の全身状態の改善も自他覚的に明らかであった. HbおよびHctの上昇はCAPD開始の初期には溢水の是正, 血漿総量の減少によるところがあると推測されたが, 以下の如きCAPDの特性にもとづく要因も大きく作用したものと考えられた.
1) BUN, 血清クレアチニン等小分子量物質の低下, 2) methyl guanidineの有意な低下, 3) β2-microglobulinの低下からも推定される中分子量物質の有意な減少, 4) 水・塩分制限の撤廃による食生活の簡易化と向上, 5) 各症例に程度の差はあれ共通していた透析困難症または類似の症状が回避されたことによる心身への好影響, 6) 鉄代謝よりみた鉄利用率の向上.
これらが相乗的に作用しCAPDが貧血改善をもたらすものと推定される.
しかし, CAPD症例にはカテーテルの不調, 腹膜炎などが一定の比率に, しかも特定の患者に頻発しこの場合にはHb, Hctの低下を伴うため注意深いバッグ交換とカテーテル出口のケアーが心須である.
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© 社団法人 日本透析医学会
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