人工透析研究会会誌
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酢酸透析と重炭酸透析におけるヘモグロビンの酸素親和性に関する研究
安藤 亮一桑原 道雄芝本 隆斉藤 博武内 重五郎椎貝 達夫
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1985 年 18 巻 2 号 p. 155-159

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抄録
ヘモグロビンの酸素親和性は組織への酸素供給の重要な因子である. 慢性腎不全患者では, 貧血に対する適応現象としてヘモグロビンの酸素親和性が減少し, 血液の酸素運搬能が上昇していることが知られている. 酢酸透析はアシドーシスを改善させ, Bohr効果により酸素親和性を増大させるとされているが, 重炭酸透析が酸素親和性にいかなる影響を及ぼすかは十分に検討されていない。そこで, 著者らはヘモグロビンの酸素親和性に及ぼす影響について, 酢酸透析と重炭酸透析との間で比較検討した. 対象は明らかな心・肺疾患を有しない血液透析患者8例である. 同一症例に対して, 酢酸透析と重炭酸透析を施行し各透析前後で, 動脈血ガス分析, ヘモグロビン濃度 (Hb), 血清無機リン (S-iP), 赤血球2, 3-diphosphoglycerate (2, 3-DPG), 酸素解離曲線について検討した.
その結果, 動脈血ガスでは両透析でpHの上昇, Po2の低下がみられたが, 透析後のPco2が重炭酸透析で有意に高値である以外, 両透析間には差が認められなかった. Hbは両透析で不変, S-Pは両透析で減少,, 3-DPGは両透析で不変であり, いずれも両透析間に差が認められなかった. P50 (in vivo) は酢酸透析において透析前28.5±0.6 (平均値±SE) mmHgより透析後25.7±0.6mmHgへと有意に減少し, 重炭酸透析においても前28.6±1.0mmHgから後26.7±0.8mmHgへと有意ではないが, 減少傾向を示した. なお, 前値, 後値, 変化量には両透析間で差が認められなかった.
以上より, ヘモグロビンの酸素親和性に及ぼす影響には, 酢酸透析と重炭酸透析との間で差がないと考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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