人工透析研究会会誌
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糖尿病性腎症による慢性腎不全患者の血液透析における心機能評価
特に全身血管抵抗について
村沢 恒男田口 真鈴木 透理広藤 良樹藤井 裕介藤本 紘太郎小川 富雄羽入田 陽一郎上田 征夫原 文男本田 信義
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1985 年 18 巻 2 号 p. 149-154

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抄録
糖尿病性腎症 (DN) による慢性腎不全 (CRF) 患者5例 (DN群) につき血液透析 (HD) 施行時における心機能を測定し, 特に全身血管抵抗について非DN性CRF患者10例 (non-DN群) および腎機能障害を認めない糖尿病患者5例 (DM・non-CRF群) と比較検討を行った.
症例の内訳は, 維持HD4例, 導入期HD1例, 年齢は59~67歳, 平均62歳, 糖尿病歴は3~19年, 平均11年, lDDM2例, NlDDM3例であった. 方法はSwan-Ganzカテ-テルを挿入し, 心係数, 左室仕事量 (SWI) および全身血管抵抗係数 (SVRI) を算出した. 各測定はHD開始前, 開始後1時間毎および終了30分後に行った.
1) DN群のHD施行前のSVRIの平均は (1.76±0.25) ×103dyn・sec・cm-5・m2で健常平均値と比較すると低く, non-DN群の平均と比較しても低い傾向にあり, DM・non-CRF群の平均とは有意に低かった. 2) HD施行中のSVRIの変化について検討し, HD施行前を100としたSWI%と, 同じく施行前を100としたSVRI%との関係をみると, SWI%の変化にかかわらずSVRI.%はほぼ一定の傾向を示し, SVRI%=-0.104× (SWI%) +103.9の関係がみられ, non-DN群でのSVRl%=-0.311× (SWI%) +=132.5と比較すると差が明らかになった.以前の報告でわれわれはCRF患者ではHD施行中に除水の増加に伴い, SWIが高い逆相関で減少することを明らかにした.以上からDN群では除水に伴い減少したSWIを補うべき血管反応性としてのSVRIが, HD施行前にてすでにnon-DN群やDM・non-CRF群と比較すると低く, またHD施行中もnon-DN群と比較するとその増加率が低いことが示唆された.
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© 社団法人 日本透析医学会
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