人工透析研究会会誌
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鎖骨下静脈カテーテルをブラッドアクセスとし長期間維持透析を施行し得た1乳児例
谷澤 隆邦谷 守正稲場 進馬瀬 大助松倉 裕喜原 正則樋口 晃岡田 敏夫富川 正樹永井 晃森田 猛北川 万智子石黒 真由美川田 やす子松島 登志美村藤 頼子浦野 美津子宮村 美幸
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1985 年 18 巻 3 号 p. 331-338

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抄録
乳児期発症の腎不全に対する治療法としてHDは十分な血流を有するブラッドアクセスの造設, 維持が困難なために一般にPD, CAPDが第1選択の治療法である.
今回我々は生後5ヵ月時先天性発育不全腎により慢性腎不全に陥った乳児に対しPD, CAPDを施行したが難治性腹膜炎, カテーテル出口部感染により腹膜カテーテルを抜去せざるを得ず, 生後10ヵ月時外シャントによるHDを開始したがシャント閉塞, 静脈炎, 皮下トンネル感染を繰り返すため将来の内シャント用血管の温存, 内シャント成熟までの待機を目的に1歳時鎖骨下静脈へ成人用IVH用カテーテルをブラッドアクセスとして留置し, 試作したpressure to pressure limited double pump systemによるシングルニードルHDを開始した. 本法にて約1年1ヵ月間維持HDを施行し, 2歳2ヵ月時 (体重9.4kg) に母親をドナーとして腎移植に成功し, 移植後1年の現在まで生着中であり, 移植前に認めた合併症 (身体発育, 精神発達遅延) は著明に改善しつつある.
以上の結果より, 乳児腎不全に対するHDにおいて鎖骨下静脈カテーテルはブラッドアクセスとして臨床的に有用であることを報告し, 乳児期発症腎不全の合併症に対して文献的考察を加え, 腎移植を前提とした適正透析管理の重要性を強調した.
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© 社団法人 日本透析医学会
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