日本透析療法学会雑誌
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急性パラコート中毒症例に対する腸洗浄法の有効性について
安藤 義孝安藤 公子土屋 智菅原 健太郎尾形 真光吉田 智関口 博行田野 由子霞 利夫
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1985 年 18 巻 4 号 p. 365-370

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抄録
昭和53年から59年6月30日までの7年間に経験したパラコート中毒症例53例に対して, 胃洗浄, 腸洗浄, DHP, メチルプレドニゾロンによるパルス療法, 強制利尿の治療法が, 生存や延命にどの程度寄与しているかを種々の服毒量に分けて検討した.
治療内容から昭和53年から57年12月31日までをI期, 58年の1年間をII期, 59年1月より6月30日までをIII期として分析した. I期の治療内容は胃洗浄, DHP, メチルプレドニゾロンによるパルス療法, 強制利尿を施行した. II期は上記に加えて, ケイキサレートを胃洗浄液に加えた. III期はさらに腸洗浄法を採用した. I期では服毒量10ml未満のもの1例を救命したにすぎなかったが, II期では10ml以上30ml未満の症例も救命できた. III期ては30ml以上50ml未満のものは, すべて救命することができるが50ml以上の服毒例は致命し得ていない. 生存例数はI期, II期, III期の順で増加している. 全症例に対する生存例の割合もI期5%, II期16%, III27%と上昇した. 生存例, 1週間以上生存例, 1週間以内死亡例数には服毒から胃洗浄までの時間に差がなかった. 腸洗浄を行い, 下痢が起こったものは生存例, 1週間以上生存が多く, 1週間以内死亡例は少なかった. 下痢が起こっても生存するとは限らないが, 生存あるいは1週間以上延命する可能性が高かった. このことより腸洗浄法がパラコート中毒の治療法として有効であると考えられた.
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