現在, 透析液のアルカリ化剤として, acetate, bicarbonateが主に使用されている. Acetate透析液では代謝性アシドーシスの改善が不十分な症例もあり, bicarbonate透析液では血中bicarbonateの急激な上昇を来すが, 透析液中bicarbonate濃度以上の上昇が望めない. 我々はこれらの点を解決する方法として, acetate, bicarbonateを混合した透析液を作製し使用してきた. 今回は最適なacetateおよびbicarbonateの混合比について検討したので報告する.
対象は当院に外来通院中の慢性透析患者6名 (男性3名, 女性3名) 平均年齢61歳である. Acetate透析前後での血中bicarbonate濃度の上昇が不良 (3.1±0.7mEq/
l, mean±SD) なA群3例と良好 (5.7±1.2mEq/
l) なB群3例に分けて検討した. 使用した透析液のacetate, bicarbonateの混合比は, 35:0, 25:10, 20:15, 15:20, 8:27である. 各透析液を用いて各患者それぞれ3回の血液透析を施行した. 検討項目は, 動脈血pH, 血中bicarbonate, acetate, TP, Na, K, BUN, creatinine, total-Caとした.
A群では各透析液において血中bicarbonate濃度の上昇は8:27混合液で最も高値を示し, 以下15:20, 25:10, 35:0, 20:15混合液の順であった. 血中acetate濃度は, 透析液中に含まれるacetate濃度に比例し, 35:0混合液が他の4法に比し有意に高値を示した. B群では, 血中bicarbonate濃度は血液透析終了時で, 35:0, 20:15混合液に比し15:20混合液が高値であった. 血中acetate濃度はA群と同様の結果を示した.
8:27混合液では, A, B両群, 15:20混合液でB群が透析中に急激な血中bicarbonate濃度の上昇をみた. この時, 急激な代謝性アシドーシスの改善によると思われる頭痛等の症状を認めた. 血中acetate濃度は35:0混合液が最も高値を示し, A群においては血中acetate濃度の上昇に伴い頻回の血圧低下を認めた. A群では, 15:20混合液が血中bicarbonate濃度の急激な上昇もなく平均的な変動を示した. 以上によりacetate透析時, 代謝性アシドーシスの改善が不良な症例では, acetate: bicarbonate比が15:20の混合液が代謝性アシドーシスの改善も十分であり, acetateの体内での代謝能に適合した至適処方であると考える.
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