日本透析療法学会雑誌
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NACダイアライザーによる副作用の実態
越川 昭三小暮 美津子前川 正信三村 信英中林 宣男太田 和夫
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1985 年 18 巻 4 号 p. 417-423

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抄録
昭和56年12月から翌57年2月にかけて, 透析患者に眼の充血・疼痛を主体とする眼障害が多発し, これがNACシリーズの中空系型ダイアライザーに起因することが明らかになった. このダイアライザー副作用の実態を正確に把握し, かつ原因物質解明のための資料を得る目的で, 透析担当医および患者に調査表を送付して, 調査研究を行った. 回収率は73.4%, 発症患者数は167名であり, 推定発症患者総数173名の96.5%を捕捉していることになる. 発症率は推定使用患者の約40%であり, 昭和57年2月上旬のピーク時には70%に達した. 副作用は強膜炎が主体で眼の充血・疼痛・流涙・羞明を訴えるが, 同時に耳鳴・耳痛・めまいを合併している患者が多く, 本副作用は強膜と第8神経を同時に障害するものであると推定される. 発症は比較的短時間におこり, 透析中に発症するもの27.6%, 同日中に発症するもの70%であった. 症状のピークは発症2-3日後で, 約70%は3週内に治癒する. 視力障害は16.8%に発生したが, 1例を除き改善している. この1例は緑内障の診断のもとに手術をうけた症例である. 発症後にもNACダイアライザーによる透析を継続した症例は, 治癒までの期間が長くなる傾向がみられたが, いずれも完全に治癒している. ダイアライザー洗浄に1,000ml以上の液を使用する施設では発症が少なく, 原因物質は洗浄によって溶出する性質のものであることが推測された.
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© 社団法人 日本透析医学会
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