日本透析療法学会雑誌
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透析患者に対する腹部手術の検討
大平 整爾阿部 憲司佐々木 偉夫今 忠正佐藤 和広
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1985 年 18 巻 5 号 p. 499-511

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抄録
過去5年間に私どもが経験した腹部手術48例を検討の対象とした. 内訳は胃切除17例 (胃・十二指腸潰瘍11例, 胃癌6例), 虫垂切除9例 (すべて化膿性または壊死性で内4例は穿孔), イレウス7例 (腸切除5例, 癒着剥離2例), 胆嚢摘出2例, 脾摘出2例, 子宮摘出2例 (癌1例, 出血性筋腫1例), 直腸切断・人工肛門造設 (直腸癌) 1例, 虚血性腸管壊死に対する腸管切除5例, その他3例であった.
これらの経験からまず開腹術前・中・後に共通する問題点をとりあげ, もっとも症例の多かった胃切除例を中心に考察した.
胃切除後の追跡調査結果を腎機能正常な胃切除症例と対比すると真の体重増加, 貧血の改善, 活動力の回復など総じて透析患者では有意に劣っており特別な栄養学上の工夫, 管理が必要であった. 心機能の高度低下例ではSCUF, CAVH等の血液浄化法上の変法も有効であった. 次いで, 虚血性腸管壊死5例に6回の手術を行ったが, 病変は回盲部, 上行結腸に限局性にみられ病変部腸管は著しく貧血状で菲薄化していた. しかし, 比較的大きな腸間膜動脈より中枢側には血栓形成を認めていない. 開腹所見ではすべての汎発性腹膜炎の状態でありながら臨床的には必ずしも激裂な症状を呈してはおらず手術の決定には困難を伴った.
いずれの症例も持続的低血圧かそれに近い状態にあることや, 透析間体重増加が大きく従って1回透析あたりの除水量が至適量をはるかに越えているなど, 透析患者の病態に特徴的な因子の関与が強く示唆されたためこれらについても考察を加えた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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