日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
重炭酸透析における透析液重炭酸の至適濃度について
岩本 均清水 正樹佐藤 長典福村 浩一中村 義弘
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 19 巻 1 号 p. 89-94

詳細
抄録
重炭酸透析における透析液HCO3-の至適濃度を検討するために, 31名の安定期透析患者における118回の血液透析を対象に, 血液ガスの変化および透析液HCO3-と透析終了時の血漿HCO3-との関係について調べた. 透析液はキンダリーAF 1号® (アセテート約8mEq/l含有) を用いて, 透析液HCO3-濃度を20.5-35.2mEq/lの間で変化させて透析を行った. 透析条件は透析液流量500ml/min, 血流量150ml/min, ダイアライザーの面積0.8-1.2m2, 透析時間4時間である.
まず透析終了時の血漿HCO3-の望ましい値 (以下, 目標値) について検討したところ, 目標値を28-30mEq/lにすると透析後にアルカローシスに傾きすぎるため, 目標値は約24mEq/lの方が安全と思われた.
透析前のアシドーシスの程度により, 軽度群 (20≦HCO3-<16mEq/l, n=31), 中等度群 (16≦HCO3-<20mEq/l, n=60), 高度群 (HCO3-<16mEq/l, n=19) の3群に分類して透析液HCO3-と透析終了時の血漿HCO3-との関係を調べたが, 各群とも両者の間には良い相関が認められた. また目標値を24mEq/lとすると, 透析液HCO3-の至適濃度は軽度群23.8mEq/l, 中等度群27.9mEq/l, 高度群30.0mEq/lとなった.
以上より, アシドーシス軽度群では透析後にアルカローシスに傾きすぎる危険性があり注意を要すると思われた. またアシドーシスの程度に応じて, 2種類以上のHCO3-濃度の異なる透析液を使い分けることが望ましいと思われた.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top