日本透析療法学会雑誌
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CAPDにおけるアポ蛋白の変動 HDと比較して
荒川 俊雄長坂 肇松下 健次山城 有機小林 登三木 章三後藤 武男坂井 瑠美西岡 正登駒場 啓太郎藤田 嘉一
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1986 年 19 巻 10 号 p. 1009-1014

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抄録

今回, 我々は慢性腎不全患者の透析開始前の状態およびそのCAPDおよび血液透析導入後18ヵ月以上にわたる血中脂質像を観察し (血中アポAI, AII, E, LCAT, コレステロール結合能 (SCBR), HDL-コレステロール, トリグリセリド (TG), コレステロール, リン脂質, リポ蛋白分画), その経時的変動をretrospectiveに観察し, 比較検討を加えた. その結果, “アポAI, AIIに関しては, 6ヵ月および18ヵ月以上の時点で, CAPD群 (6ヵ月, N=15, アポAI=113.9±16.2, N=14, アポAII=27.0±4.9, 18ヵ月以上, N=13, アポAI=108.7±16.9, N=14, アポAII=25.7±3.3mg/dl) は, HD群 (6ヵ月, N=10, アポAI=95.7±17.1, N=10, アポAII=21.7±2.9, 18ヵ月以上, N=15, アポAI=85.5±10.2, N=15, アポAII=23.3±3.2mg/dl) に比し, 有意の高値を示したにもかかわらず, HDL-コレステロールに有意差は観察期間を通じて認められなかった. またLCATは透析開始6ヵ月後においてのみ, CAPD群がHD群に比し有意に高値であったが, 以後は減少傾向を示した. またコレステロール, β-リポ蛋白百分比も同様に, 6ヵ月および18ヵ月以上の時点でCAPD群はHD群に比し有意の高値を示したが, α, pre β-リポ蛋白分画は百分比で逆に低値の傾向を示した.
次に, 両群におけるアポAI, AIIとHDL-コレステロールの相関に関しては, CAPD群は, その相関直線の傾きがほぼ一定しており, 殆ど変動を認めないのに対して, HD群では, その相関直線の傾きが経時的に増加する傾向が認められた.
以上の結果より, CAPD長期継続例における脂質代謝の変動は特異的であり, 動脈硬化に関しprotecting factorと言われるアポAIが高値をとるにもかかわらず, HDL-コレステロールは低値であるという解離が認められる. これは血中HDLの質的変化を予測させた.

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