日本透析療法学会雑誌
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慢性腎不全患者における血漿ADHおよびneurophysinレベルについて
長谷川 弘一松下 義樹井上 隆森井 浩世山路 徹
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1986 年 19 巻 10 号 p. 931-937

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抄録

40例の健常人, 14例の非透析慢性腎不全患者, 18例の血液透析中の慢性腎不全患者について血漿ADH, NSN, ESNをradioimmunoassayを用いて測定したところ, 慢性腎不全患者の2群では健常人に比してADH, NSN, ESNとも有意に高値を示した. また血液透析患者では非透析患者に比して有意に高値を示した.
非透析患者ではADHとNSN, ADHと血清クレアチニン, 有効血漿浸透圧とADH, 血清クレアチニンとESNの間に有意な正の相関関係, 血清CaとADHおよび血清CaとNSNの間に有意な負の相関関係をみた.
血液透析患者では血漿ADHは透析後, 透析前に比して有意に低下し, 血漿NSN, ESNは逆に有意に上昇した. ADHと有効血漿浸透圧および透析前後のNSNの変化率と循環血液量の減少率との間には有意な正の相関関係がみられた. しかしNSNとESN, ADHとNSN, ADHと血清Ca, ADHとMBP, 透析前後のADHの変化率と体重減少率, ADHの変化率と循環血液量の減少率との間には有意の関係はなかった.
これらの成績によって慢性腎不全患者ではADHの分泌は第一次的には有効血漿浸透圧によって調節されているとともに, ADH, NSN, ESNのturnoverが減少していることが示された. さらに非透析腎不全患者ではADHとNSNのレベルが非常に相関していることも示された.

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