抄録
最近の透析療法の進歩により, その適応範囲も拡大され, 従来は不適応とされていた糖尿病性腎不全および高齢者の施行も可能となり患者数も増加している. これらの患者をめぐる精神的問題については, 実にさまざまなものがあり, 以前より数多く報告されている. 著者らも10年以上の長期透析患者の心理的問題を報告し, 患者と医療スタッフとのラポールの重要性について述べたが, 今回は合併症および身体的条件に悩む糖尿病による腎不全患者, 高年齢透析患者について, 心理的側面より患者をいかに透析療法へうまく適応させ, これを維持させるか, さらにこれら患者のかかえる精神的ストレスはどのようなものがあり, それにはどのような対処なり援助が必要かを検討した.
その結果, 糖尿病性腎不全と慢性腎炎による透析患者の比較では, 腎臓病に対する受けとめ方は, 両群とも大変なものとしているが, その受けとめ方を, 糖尿病群では実に多彩な表現で示すのに対し, 慢性腎炎群では恐いといったかなり一致した表現でこれをとらえている. 日常生活における一般的態度は, 糖尿病群ではより否定的なものが多い. その他, 透析療法に対する態度, 医療スタッフに対する態度, 現代医学に対する態度, 療養の支えなどについては両群に差は認められなかった.
次に, 高年齢者と若年齢者の透析患者の比較では, 高年齢者は表面的には透析療法を続けることに対して, あきらめのような気持ちを持っているが, 療養上の支えや, 療養生活で最も苦痛としていることがほとんど同じであることから, 心理的には, 高年齢者も若年齢者も透析療法から受ける重圧はまったくかわりがないことがわかった.