日本透析療法学会雑誌
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長期CAPD患者の看護
バックアップ入院からの検討
波多野 照子浦部 乃武代甲斐 美穂子石田 美津子
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1986 年 19 巻 3 号 p. 283-288

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抄録
CAPDは家庭自己治療が特徴であり, 末期腎不全患者に対して良好な治療成績, 質の高い社会復帰が期待される. しかし実際には血液透析治療の困難な合併症の多い患者に適応されることも多い. 済生会八幡病院で最近の5年間に1年以上CAPDを継続できた患者は男16名, 女6名計22名で, 年齢は平均53.1 (7-75) 歳である. CAPD適応の理由は70歳以上の高齢5, 小児3, 重度の心循環系合併症4, 糖尿病性腎症4, 血液透析困難症2, シャントトラブル1, その他3である. 22名の予後はCAPD継続15, 転医1, 脱落2, 死亡4で, 脱落の原因はトンネル感染2, 死因は心不全2, 腹膜炎1, 衰弱1である. バックアップ入院は延観察期間548.4ヵ月で22例中21例に計60回70.6ヵ月, 1患者年あたり1.31回47.1日で, 腹膜炎21回, 体液管理の失敗12回, カテーテル出口およびトンネル感染4回, ヘルパーの不都合8回, 注排液異常5回, 再教育2回, イレウス, 腹壁ヘルニア, アダムス・ストークス発作, 不明熱, 衰弱が理由である. 腹膜炎は22名中13名に21回発生し, 発生頻度は26.1患者月に1回であった. 原因はスパイクミス62%, トンネル感染19%で, スパイクミスによる腹膜炎はCAPD導入後1-2年に発生頻度が高く, トンネル感染による腹膜炎はカテーテルを抜去しないと治癒困難である. CAPDを発展成功させるには, バッグ交換や腹膜カテーテル周辺技術の改良とともに, CAPD施設においては教育訓練された腎臓病専門医とCAPDナースを中心とした独立したCAPDプログラムを確立することである. CAPDナースは患者の初期教育, 外来での継続看護とともに, 病棟ナースの教育と連携に努めることが大切である.
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