日本透析療法学会雑誌
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慢性透析患者に対する外科手術療法の問題点
清水 武昭佐藤 攻長谷川 滋大村 康夫金子 一郎平沢 由平吉田 圭介
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1986 年 19 巻 3 号 p. 289-294

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抄録
最近7年間に小手術, 腎移植以外の外科手術例を92例経験した. 胃十二指潰瘍出血6例 (1例胃癌合併), 胃癌5例, 腸閉塞症8例, 総胆管結石症4例, 急性虫垂炎4例, 大腸穿孔 (虚血性腸疾患) 2例, 副甲状腺機能亢進症31例, 甲状腺癌2例, 嚢胞腎感染10例, 肺癌1例, その他13例であった. 手術死亡は9.3%と高率であるが, 緊急手術が24.7%であるのに対して, 予定手術の手術死亡簿59例中1例 (1.7%) で決して透析患者の手術は困難ではなかった. 腎不全の病態を良く把握し患者に相対することが重要であると考えられた. 胃十二指潰瘍出血例の大部分は保存的またはエタノール局注療法で十分止血可能であったが, 手術療法を施行せざるを得ない場合2/3胃切除術では不十分で4/5胃切除術+選迷切が適当であった. 慢性透析患者の胃十二指腸潰瘍は本質的にはストレス潰瘍であると思われた. 癌に対しては通常と同様に2群リンパ節郭清を基本として施行してきた. 副甲状腺機能亢進症に対する手術は最近では月に1-2例あるが手術としては小手術で, 正確な部位診断および病態の究明が大切ではないかと思われた. 虚血性腸疾患および肝臓癌は今後も増加すると想像され問題の多い分野ではないかと思われた. 外科手術に際しての術前, 術中および術後処置に関しても言及した.
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© 社団法人 日本透析医学会
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