日本透析療法学会雑誌
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CAPD療法における抗生剤の投与方法と体内動態
長谷川 廣文寺下 泰成高橋 計行山本 義久板垣 信生農野 正幸今田 聰雄堀内 篤
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1986 年 19 巻 4 号 p. 335-340

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抄録

CAPD療法施行中の慢性腎不全患者15例 (34回) に5種類の抗生剤 (cephalothin: CET, cefotaxime: CTX, ceftizoxime: CZX, ticarcillin: TIPC, tobramycin;TOB) を投与し体内動態について検討した.症例は非腹膜炎時・抗生剤静脈内投与群 (IV群), 非腹膜炎時・抗生剤腹腔内投与群 (IP-P (-) 群) と腹膜炎時・抗生剤腹腔内投与群 (IP-P (+) 群) の3群に分けた.各抗生剤の投与量は, IV群, lP群ともTOBは60mg, β-lactam系は1gとした.
IV群では6時間後の血清濃度は, CZX 51.3mg/l, TIPC 45.2mg/l.CET 17.4mg/l, CTX 9.51mg/l, TOB 5.35mg/l, また, T1/2β, CZX 9.8hr, TIPC 11.9hr, CET 3.0hr, CTX 2.2hr, TOB 18.7hrであった.一方, 透析液中のpeak値はCZX 24.7mg/l, TIPC 15.9mg/l, CET 15.5mg/l, CTX 13.5mg/l, TOB 3.60mg/lであった.
IP-P (-) 群の6時間後の透析液濃度は, CTX 166mg/l, CZX 105mg/l, TIPC 88.2mg/l, CET 55.0mg/l, TOB10.9mg/lであった.一方, 血清濃度は投与1時間後にはTPC 43.4mg/l, CZX 14.5mg/l, CE T14.8mg/l, CTX10.6mg/lと上昇, peak値はTIPC 75.9mg/l, CZX 32, 8mg/l, CET 18.4mg/l, CTX 11.3mg/lであった.CZXとTIPCの血清peak値は6時間後であったが, CET, CTXの血清peak値は2~4時間で以後減少した.
IP-P (+) 群では, 透析液中の各抗生剤濃度は, 6時間後の透析液濃度はTIPC 426mg/l, CET 30.0mg/l, CTX34.4mg/lであった.血清濃度は, 投与15分後には10mg/l, 以上に上昇した.特にCTXでは非腹膜炎時の2倍以上となった.CET, CTXでは, desacetyl化されるためにCZXやTlPCに比べてT1/2β は短かく, また, 血清濃度や透析液濃度において異なった体内動態がみられた.抗生剤の腹腔内投与時には各抗生剤問で差がみられるもののβ-lactam系では血清濃度は10mg/1以上になり, また腹膜炎合併時には腹膜の薬剤透過性が高まることにより血清濃度はよりすみやかに高くなった.
以上のことから, 腹膜炎の治療には腹腔内投与の方が腹腔内抗生剤濃度を高く維持することができ, また, 血清濃度は十分な濃度がえられることから, 静脈内投与に比較してより効果的な方法と考えられた.

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