日本透析療法学会雑誌
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透析患者の神経伝導速度
山縣 淳小幡 紀夫水沢 直人
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1987 年 20 巻 8 号 p. 591-595

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抄録

透析療法の進歩により, 長期透析患者が多くなり, 不定愁訴を訴える患者も増加してきた. 私たちは透析患者のニューロパチーを検討するために, 神経伝導速度を測定してきたが, 今回右正中神経について詳細に検査し, 健常対照群と比較検討した. 健常対照群では運動線維の神経伝導速度は加齢に従い低下しており, 逆に閾値は年齢とともに上昇していた. 知覚線維でもこの傾向はみられたが, 運動線維ほど著明ではなかった. 透析患者群の年齢による伝導速度の遅延, 閾値の上昇は運動線維, 知覚線維ともに著明であった. 運動線維の神経伝導速度は透析患者群では健常対照群にくらべ各年齢で著明に低下していたが, 知覚線維では差はみられなかった. しかし, 閾値は, 両群とも運動線維も, 知覚線維も加齢に従い上昇しており, 透析患者群の閾値は健常対照群に比べ明らかに上昇していた. 慢性腎不全患者の神経伝導速度の遅延, 閾値の上昇は軸変性に続いておこる脱髄性変性と考えられており, その変化は閾値に早期にみられた. このように神経伝導速度の測定は, 閾値を同時に記録することにより, 透析患者の神経傷害をみるうえで有力な方法と考えられるが, その場合に年齢による変化を考慮しなければならない.

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